フッ素ゴムとは?特徴や使用例を詳しく解説

産業分野において幅広く利用されているゴム素材のひとつに、フッ素ゴム(FKM)があります。
非常に優れた耐熱性・耐薬品性・耐油性を持ち、
特に 自動車、化学プラント、電気・電子分野 において欠かせない素材です。
本記事では、フッ素ゴムの基本特性からシート・チューブ・パッキンといった製品形態、
さらに「フッ素ゴム(FKM)」と「FFKM」の違いまで深掘りし、
規格や導入メリット、製品選定のポイントを詳しく解説します。
目次
1、フッ素ゴムとは?
フッ素ゴムは、フッ化ビニリデンやヘキサフルオロプロピレンなどを主成分とし、
1950年代にアメリカで開発されました。
現在は バイトン(Viton) という商品名でも広く知られています。
呼び方の違いは以下の通りです。
-
フッ素ゴム:日本語表記
-
FKM:ISO規格での国際的呼称(Fluoroelastomer)
-
バイトン(Viton):デュポン社(現 Chemours社)の商品名
2、フッ素ゴム(FKM)とFFKMの違い
フッ素ゴムと一口に言っても、いくつかの種類があります。その代表が FKM と FFKM です。
FKM(フッ素ゴム)
-
主成分:フッ化ビニリデン(VdF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)など
-
耐熱温度:200〜250℃程度
-
耐薬品性:強酸・有機溶剤に強いが、ケトン・アミンには不向き
-
コスト:比較的入手しやすい価格帯
-
用途:自動車部品、一般産業用シール、燃料系統部品
FFKM(パーフロロエラストマー)
-
主成分:フッ素を完全に含んだパーフルオロポリマー
-
耐熱温度:300℃近くまで耐久
-
耐薬品性:ほぼすべての薬品に耐性を持つ(ケトン・アミンにも耐える)
-
コスト:非常に高価(FKMの数十倍になる場合も)
-
用途:半導体製造装置、宇宙産業、超高純度薬品を扱う分野
選定ポイント
-
一般的な産業用途 → FKM(コストと性能のバランス)
-
超高温・強薬品環境 → FFKM(最高レベルの耐性)
3、代表メーカー別フッ素ゴムブランド比較
フッ素ゴムは世界中のメーカーから供給されており、それぞれの商品名(ブランド名)で流通しています。
ここでは代表的なブランドを比較し、特徴を整理します。
① Chemours(ケマーズ/旧デュポン):「Viton(バイトン)」
-
最も有名なフッ素ゴムブランド
-
高い耐熱性と耐油性を兼備
-
自動車、航空宇宙、化学プラントで標準採用されることが多い
-
グレードの種類が豊富(耐低温グレード、耐薬品グレードなど)
② Daikin(ダイキン工業):「Dai-El(ダイエル)」
-
日本発の代表的なフッ素ゴムブランド
-
自動車・産業機械向けに強み
-
国内調達性が高く、安定供給に優れる
-
ダイキン独自の低燃費対応グレードも展開
③ Solvay(ソルベイ):「Tecnoflon(テクノフロン)」
-
ヨーロッパを代表するフッ素ゴムブランド
-
化学プラントやエネルギー産業向けに実績が豊富
-
耐薬品性が特に強化されたラインナップあり
④ 3M(スリーエム):「Dyneon(ダイニオン)」
-
高純度用途に適したグレードを展開
-
半導体や医療機器分野でも使用される
-
耐プラズマ特性を持つ特殊グレードあり
⑤ その他のメーカー
-
上海・韓国などでもFKMブランドが展開され、コスト重視用途で採用されるケースもある
-
FFKMでは Kalrez(カルレッツ/Chemours)、Simriz(シムリッツ/Simrit) など
まとめると、
-
グローバルスタンダード → Viton
-
国内調達性・安定供給 → Dai-El
-
耐薬品性重視 → Tecnoflon
-
特殊環境(半導体等) → Dyneon
-
超高耐性 → Kalrez(FFKM)
用途・コスト・調達性の観点から、最適なブランドを選ぶことが重要です。
4、フッ素ゴムの主な特徴
-
耐熱性:200℃を超える高温でも長期間性能を維持
-
耐薬品性:酸・アルカリ・有機溶剤に強く、化学プラントで重用
-
耐油性:燃料油や潤滑油に強い耐性
-
ガス透過性が低い:シール性能に優れ、気密性を確保
-
機械的特性:高い弾性と強度を兼備
5、フッ素ゴムの代表的な使用例
自動車分野
-
燃料ホース、Oリング、ガスケット
-
エンジン回りの耐熱シール材
化学プラント分野
-
酸・アルカリ環境のシール材
-
バルブ・ポンプ用ガスケット
電気・電子分野
-
耐熱ケーブル被覆
-
半導体製造装置の耐薬品部品
一般工業分野
-
真空装置用シール
-
高温配管ガスケット
6、フッ素ゴムシートについて
フッ素ゴムをシート状に加工した製品は、高温・耐薬品性が求められる現場で使用されます。
用途例
-
化学プラントのガスケット素材
-
半導体製造装置のシール部品
-
耐熱防水用パッキン材
特徴
-
強酸・強アルカリ環境でも使用可能
-
高温下でも物性劣化が少ない
-
打ち抜き加工が容易
7、フッ素ゴムチューブについて
フッ素ゴムを押出成形してチューブ形状に加工した製品は、流体輸送やケーブル保護に用いられます。
用途例
-
燃料・オイルラインの耐熱ホース
-
化学薬品輸送用チューブ
-
電線・ケーブルの絶縁被覆材
-
真空装置の接続チューブ
特徴
-
高温流体の輸送に適応
-
酸・アルカリ・燃料油に強い
-
長尺供給が可能
8、フッ素ゴムパッキンについて
パッキンは、接合部の漏れ防止・防水・防塵を担う重要部品です。
フッ素ゴムは特に高温・薬品環境でのシール性能に優れています。
用途例
-
自動車燃料系統のOリング・ガスケット
-
化学装置のフランジシール
-
真空装置用シール材
特徴
-
高温下でも長寿命
-
耐薬品性・耐油性に優れる
-
高気密性を発揮
9、フッ素ゴム導入のメリット
-
耐久性向上による長寿命化
過酷環境でも長期使用が可能で、交換サイクルを延ばせる。 -
安全性と信頼性の確保
耐熱・耐薬品性により、設備トラブルや事故リスクを軽減。 -
幅広い用途への対応
シート、押出品、パッキンなど多様な形態で供給可能。 -
国際規格対応
RoHS・FDA・ULなどの規格適合品も多く、グローバル調達に対応
10、ゴム硬度の基礎知識(フッ素ゴム編)
フッ素ゴムを選定する際の重要指標の一つが「硬度」です。
JIS規格に基づく硬度測定
-
JIS K 6253 に準拠(JIS A硬度が一般的)
-
単位は「度(Hs)」で表記
フッ素ゴムの硬度範囲
-
約55°~90°まで流通
-
標準的には70°前後が多く、Oリングやパッキンに採用
-
高荷重用途では硬度90°品が選ばれる
硬度選定のポイント
-
柔軟性と密封性重視 → 中硬度(65°~75°)
-
耐摩耗・高荷重用途 → 高硬度(80°~90°)
11、フッ素ゴム製品の選び方チェックリスト
フッ素ゴムを導入する際は、以下を確認することが重要です。
✅ 使用環境は高温か常温か
✅ 薬品や油との接触があるか
✅ 必要な硬度・強度はどの程度か
✅ 製品形状(シート、成形品、チューブ、パッキンなど)
✅ 規格適合の有無(FDA、RoHS、ULなど)
✅ コストと性能のバランス
これらを事前に整理することで、最適な材料選定とスムーズな調達が可能になります。
12、まとめ
フッ素ゴム(FKM/Viton)は、耐熱性・耐薬品性・耐油性に優れた高機能ゴムで、
自動車・化学プラント・電気分野など幅広い産業に不可欠な素材です。
さらに、最高レベルの耐熱・耐薬品性を持つFFKMも存在し、
半導体製造や宇宙産業といった最先端分野で使用されています。
用途や環境に応じてFKMとFFKMを適切に選定することで、
製品の信頼性・安全性を大幅に向上させることができます。
木成ゴム株式会社では、 フッ素ゴムシート・パッキンなど多様な製品を取り扱っております。
用途や条件に合わせて最適な材料をご提案し、試作から量産まで一貫サポートいたします。
「高温・薬品環境で使えるシール材を探している」
「フッ素ゴムと他のゴムの価格差を知りたい」など、
どんなご相談でもお気軽にお問い合わせください。