樹脂とは?特徴や種類を詳しく解説

産業分野において「樹脂」という言葉は非常に広範囲に用いられます。
自動車部品、電気・電子機器、建築資材、医療機器、包装材料など、
私たちの生活を支えるあらゆる分野で樹脂は不可欠な素材です。
金属やガラスと比べても、軽量で成形性に優れるため代替材料として利用されるケースも多く、
近年では高機能化やリサイクル性の観点からさらに注目度が高まっています。
しかし「樹脂」と一口にいっても、天然由来のものから石油化学を基盤とした合成樹脂まで多様であり、
特性や用途も大きく異なります。
本記事では、樹脂の基本的な定義から種類ごとの特徴、
さらに産業用途での利用シーンや選定のポイントまで、包括的に解説します。
目次
1、樹脂とは?定義と基本概念
「樹脂」とは、広義には粘性を持ち、硬化すると固体となる高分子物質を指します。
古くは松脂(まつやに)など天然由来の物質が代表例でしたが、
現在では石油化学を基盤とした「合成樹脂(プラスチック)」が主流です。
樹脂は分子量の大きな「高分子(ポリマー)」から構成され、
柔軟性や耐熱性、電気特性、耐薬品性など、特性は種類によって大きく異なります。
そのため、単に「樹脂」といっても汎用的なプラスチックから高機能素材まで幅広い領域をカバーしています。
2、天然樹脂と合成樹脂の違い
樹脂は大きく 天然樹脂 と 合成樹脂 に分類されます。
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天然樹脂
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植物から分泌される松脂、シェラック、琥珀など。
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古代から接着剤や装飾品として利用されてきた。
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現在では用途は限定的だが、塗料や楽器などで残っている。
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合成樹脂(プラスチック)
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石油などの化学原料を基に人工的に合成された樹脂。
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汎用性が高く、加工方法も射出成形・押出成形・真空成形など多岐にわたる。
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自動車、電機、建築、医療など現代産業を支える主要材料。
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現在「樹脂」といえば、多くの場合は合成樹脂を指します。
3、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂
合成樹脂は性質により大きく二種類に分けられます。
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熱可塑性樹脂
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加熱すると柔らかくなり、冷却すると固化する。
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再加熱すれば再び成形可能。
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例:PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PET、など
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特徴:リサイクルが比較的容易で、成形性に優れる。
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熱硬化性樹脂
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一度硬化すると再加熱しても溶融しない。
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高い耐熱性・耐薬品性を持ち、構造材や電気絶縁材に利用される。
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例:エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂など。
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製品用途に応じて、どちらを選ぶかが大きなポイントになります。
4、汎用樹脂の特徴と用途
汎用樹脂は生産量が多く、コストパフォーマンスに優れた樹脂群です。
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PE(ポリエチレン):包装フィルム、容器、パイプ。耐薬品性に優れる。
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PP(ポリプロピレン):食品容器、自動車部品。軽量で耐熱性に比較的優れる。
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PVC(ポリ塩化ビニル):建材、配管、電線被覆。耐候性と加工性に優れる。
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PS(ポリスチレン):家電筐体、食品容器。透明性と加工性が高い。
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PET(ポリエチレンテレフタレート):飲料ボトル、繊維。強度・耐薬品性に優れる。
5、エンジニアリングプラスチックの特徴と用途
汎用樹脂よりも高い機械的強度や耐熱性を持ち、
産業用部品として広く用いられるのがエンジニアリングプラスチックです。
代表例:
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POM(ポリアセタール):歯車、軸受、機械部品。耐摩耗性と寸法安定性。
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PA(ナイロン):自動車部品、電気部品。強度と耐摩耗性に優れる。
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PC(ポリカーボネート):光学部品、ヘルメット。高透明性と耐衝撃性。
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PET(エンジニアリング用途):機械部品、電子部品。高い耐摩耗性。
6、スーパーエンジニアリングプラスチックの特徴と用途
さらに高性能で、耐熱性・耐薬品性が極めて高いのがスーパーエンプラです。
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PEEK(ポリエーテルエーテルケトン):航空宇宙、自動車エンジン部品。
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PI(ポリイミド):フレキシブル基板、耐熱フィルム。
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PPS(ポリフェニレンサルファイド):自動車電装部品、ポンプ部品。
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PTFE(ポリテトラフルオロエチレン):シール材、ライニング。耐薬品性・非粘着性が抜群。
これらはコストが高いため、必要とされる場面で限定的に用いられます。
7、産業分野における樹脂の具体的利用例
樹脂は次のような分野で幅広く活躍しています。
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自動車産業:軽量化のため金属代替として使用。燃費改善にも寄与。
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電気・電子:絶縁性・難燃性を活かし、基板やコネクタに利用。
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医療機器:滅菌対応可能な樹脂(PP、PEEKなど)が採用される。
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建築資材:断熱材、パイプ、窓枠などに利用。
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包装分野:食品安全性とリサイクル性を両立させた材料が増加。
8、樹脂と金属・ゴム・セラミックスの比較
産業分野でよく利用される以下の4種類を比べてみましょう。
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金属:強度・耐熱性は高いが、重量や加工コストが課題。
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ゴム:弾性やシール性に優れるが、強度や寸法安定性は低い。
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セラミックス:耐熱性・耐摩耗性に優れるが、加工が困難。
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樹脂:軽量・成形自由度・コストバランスに優れる。
これらの特性を踏まえ、最適な材料選定が重要となります。
9、樹脂材料を選定する際のポイント
樹脂選定では以下を考慮します。
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使用環境温度
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必要な機械的強度
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耐薬品性の有無
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電気特性(絶縁性・導電性)
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加工方法(射出、押出、切削など)
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コスト・量産性
単純な「安さ」ではなく、長期の信頼性や耐久性も含めて検討する必要があります。
10、まとめ
樹脂は、天然樹脂から合成樹脂まで多様な種類が存在し、それぞれに特性と用途があります。
特に産業分野では、軽量化・コスト削減・耐久性向上といった観点から、適切な樹脂の選定が欠かせません。
木成ゴム株式会社では、樹脂・ゴム・金属を組み合わせた最適な工業部品の提案を行っております。
用途や条件に応じた素材選定から加工、量産対応まで一貫してサポート可能です。
樹脂に関するご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。