ゴムとは?特徴や種類を詳しく解説

産業分野において「ゴム」は欠かせない素材のひとつです。
自動車産業や建築、電気電子機器、医療、食品など、あらゆる業界でゴム製品が利用されています。
柔らかさと弾力を持ちながらも高い強度を備え、金属や樹脂では代替が難しい性能を発揮するためです。
例えば、自動車のタイヤやシール材、防振ゴム、建築の免震装置、
食品機器用パッキン、医療用チューブなど、多様な現場で活用されています。
ゴムの特性や種類を理解することは、最適な材料選定・製品開発・コスト削減につながる重要な知識です。
本記事では「ゴムとは?」という基本から、種類・特徴・用途・加工方法・劣化対策まで、
詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
1、ゴムとは?定義と基本的な性質
ゴムとは、高分子材料の一種で、弾性を持つ柔軟な物質を指します。
外力によって伸びたり変形したりしても、力を除くと元の形に戻る性質を持っています。
この「可逆的な変形性能」は金属や樹脂にはないゴム独自の特徴です。
ゴムはその性質により、以下のような幅広い機能を担います。
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シール性:液体や気体を漏れなく遮断する
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防振性:衝撃や振動を吸収する
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柔軟性:変形や複雑な動きに対応する
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耐摩耗性:長時間の摩擦に耐える
また、ゴムは化学的に「加硫」という工程で硫黄などの架橋剤を加えて立体網目構造を形成します。
これにより、単なる柔らかい樹脂ではなく、弾性を長期的に維持できる高機能材料となります。
2、ゴムの歴史と産業利用の発展
ゴムの起源は天然ゴムにあります。
南米アマゾンの先住民がゴムの木(パラゴムノキ)から得られるラテックスを使って、
防水容器やボールを作っていたのが最初です。
16世紀、ヨーロッパに伝わると「鉛筆の跡を消す材料」として利用され、
これが「消しゴム」の語源になりました。
しかし当時の天然ゴムは温度変化に弱く、夏はベタつき、冬は硬化して割れるなどの欠点がありました。
1839年、アメリカのチャールズ・グッドイヤーが「加硫法」を発明し、
安定した弾性を持つゴム製品の製造が可能になりました。
これにより産業革命期にゴムは急速に広まり、特に自動車の普及とともに需要が爆発的に拡大しました。
20世紀には石油化学の発展により合成ゴムが登場し、
天然ゴムでは補えない耐油性・耐熱性・耐薬品性を持つ素材が次々に開発されました。
現在では、世界で生産されるゴムの7割以上が合成ゴムです。
3、ゴムの特徴をわかりやすく解説
ゴムが産業に広く使われるのは、次のような特徴があるからです。
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高弾性:引っ張ったり圧縮したりしても元に戻る
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柔軟性:複雑な変形や屈曲に耐える
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耐摩耗性:摩擦に強く、タイヤやベルトなど長寿命
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耐衝撃・防振性:衝撃や振動を吸収し機械の寿命を延ばす
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耐薬品性・耐候性:種類により油や酸、紫外線に強い
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絶縁性:電気を通さないため電気部品の保護に有効
ただし、紫外線・オゾン・熱・油などによる劣化が避けられないため、材料選定とメンテナンスが重要です。
4、天然ゴムと合成ゴムの違い
天然ゴム(NR: Natural Rubber)
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原料:パラゴムノキの樹液(ラテックス)
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特徴:弾性・引張強度・耐摩耗性に優れる
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弱点:耐油性・耐候性に劣る
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主な用途:タイヤ、ベルト、ホース、シューズ
合成ゴム
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原料:石油化学製品(モノマーの重合)
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特徴:種類が豊富で耐熱性・耐油性・耐薬品性など特化した性能を持つ
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主な用途:自動車部品、産業機械、建材、電気絶縁材
天然ゴムは優れた機械特性を持ちますが、特定環境下では限界があります。
一方、合成ゴムは用途や環境に応じて「必要な特性を選べる」点が大きなメリットです。
5、主な合成ゴムの種類と特徴
ゴム業界でよく使われる合成ゴムを整理します。
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SBR(スチレンブタジエンゴム)
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タイヤの主要材料
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耐摩耗性に優れる
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NBR(ニトリルゴム)
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耐油性が高く、燃料ホースやシール材に最適
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EPDM(エチレンプロピレンゴム)
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耐候性・耐オゾン性が強い
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自動車のウェザーストリップや建築用シーリング材に利用
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CR(クロロプレンゴム、ネオプレン)
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耐候性・耐油性を兼ね備える
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ベルト、ホース、電線被覆に使用
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シリコーンゴム
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耐熱性(200℃以上)に優れる
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医療機器、食品用パッキンに利用可能
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フッ素ゴム(FKM)
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耐熱・耐薬品性が最強クラス
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航空宇宙、化学プラント、半導体分野で使用
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用途に応じて素材を選ぶことが、製品性能の鍵を握ります。
6、ゴムの代表的な用途(産業分野別)
ゴムの用途を分野別に見てみましょう。
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自動車産業
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タイヤ、防振ゴム、シール材、ホース、Oリング
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建築・土木
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免震ゴム、防水シート、ジョイント材
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電気・電子
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ケーブル被覆、絶縁ゴム、スイッチキーシート
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医療・食品
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シリコーンチューブ、衛生用パッキン、医療用手袋
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日用品
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靴底、ゴム手袋、消しゴム、家庭用ホース
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7、ゴムの加工方法と成形技術
代表的な成形方法を紹介します。
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加硫成形:熱と圧力で架橋反応を進め、弾性を安定化
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射出成形:精密部品や大量生産に適用
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押出成形:チューブ、シート、ホースの製造に利用
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カレンダー成形:薄いシートやフィルムを連続生産
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圧縮成形:Oリングやパッキンに多用
用途や形状、コストに合わせて加工法を選ぶことが重要です。
8、ゴム製品の劣化要因と防止策
ゴムは経年劣化します。
主な劣化要因
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紫外線やオゾン → ひび割れ
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熱 → 硬化や柔軟性低下
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油・薬品 → 膨潤や分解
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摩耗 → 表面損傷
防止策
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耐候性に優れたゴムを選定(例:EPDM、シリコーン)
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添加剤やアンチオゾナントで補強
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コーティングや保護材の使用
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適切な保管(直射日光や高温多湿を避ける)
9、ゴムと環境問題・リサイクル技術
産業廃棄物の中でも、使用済みゴム製品の処理は課題です。
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再生ゴム:廃タイヤを粉砕し再加硫して再利用
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マテリアルリサイクル:粉砕ゴムをアスファルトや建材に混合
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熱分解リサイクル:燃料や化学原料へ変換
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バイオゴム:植物由来原料を活用した新素材の研究
今後は環境配慮型のゴム材料や循環型リサイクル技術の普及が進むと考えられます。
10、まとめ
ゴムは「弾性・柔軟性・耐摩耗性」という独自の特性を持ち、産業分野で不可欠な素材です。
天然ゴムと合成ゴム、それぞれの特徴を理解し用途に適したゴムを選ぶことが、製品の性能と寿命を左右します。
木成ゴム株式会社では、ゴム・樹脂・金属など工業部品全般の製造・加工に対応しております。
用途に最適な素材選定から加工技術のご提案まで、ワンストップでサポート可能です。
ゴム製品や工業部品に関するお困りごとがございましたら、ぜひ木成ゴム株式会社にご相談ください。
豊富な実績と専門知識をもとに、最適なソリューションをご提供いたします。