POM樹脂(ポリアセタール)とは?材質・特徴・使用例を解説

産業分野において広く使用されている樹脂の一つに、POM樹脂があります。
強度・剛性・耐摩耗性など、金属に匹敵するほどの優れた特性を持ち、
精密さや耐久性が求められる部品に数多く採用されているエンジニアリングプラスチックです。
特に、自動車や産業機械、電子機器といった分野では、
軽量化や長寿命化を実現する素材として高い評価を得ています。
本記事では、POM樹脂の材質や特徴、長所と短所、加工方法、代表的な使用例、
さらにはメーカーごとのブランド比較や選び方のポイントまで詳しく解説します。
POM樹脂を導入する際の基礎知識として、ぜひ参考にしてください。
目次
1、POM樹脂(ポリアセタール)とは?
POM樹脂(ポリアセタール)は、エンジニアリングプラスチックの代表格であり、
金属に匹敵する機械的強度と優れた耐摩耗性を備えた樹脂です。
一般的に「アセタール樹脂」とも呼ばれ、摺動部品や精密部品に数多く採用されています。
特に注目すべきは、そのバランスの取れた性能です。
強度、剛性、耐薬品性、加工性といった要素を総合的に高水準で満たすため、
幅広い産業分野で「金属代替材料」として利用されています。
たとえば、自動車のギアや燃料部品、産業機械のローラー、電子部品のコネクターなど、
生活や産業を支える場面で活躍しています。
また、他の汎用プラスチックに比べて寸法安定性が高く、繰り返し荷重にも耐えるため、
長期間の使用にも耐えうる信頼性を持つ点が大きな特徴です。
2、POMの材質
POM樹脂は結晶性の高分子樹脂で、
分子構造の違いにより大きく「ホモポリマー型」と「コポリマー型」に分けられます。
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ホモポリマー型は結晶性が高く、強度や剛性に優れます。精度を求める機械部品に多用されます。
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コポリマー型は耐薬品性や熱安定性に優れています。より過酷な環境での利用に適しています。
一般的には白色や乳白色で供給され、射出成形・押出成形といった加工方法に対応します。
さらに、切削加工にも適しているため、樹脂素材でありながら、
金属のように精密な部品を製造できる点も評価されています。
3、POMの主な特徴
POM樹脂の代表的な特徴をまとめると以下の通りです。
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高強度・高剛性:金属代替として使用可能なほどの優れた機械的特性
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低摩擦・耐摩耗性:自己潤滑性を持ち、摩擦の多い摺動部品に最適
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寸法安定性:熱膨張が小さく、精度を要する部品にも利用可能
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耐疲労性:繰り返し荷重に対して強く、長寿命を実現
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耐薬品性:油類や有機溶剤に安定しており、薬品環境下でも使用可能
これらの特性は、一般的な樹脂と比較しても高い水準にあり、設計者にとって扱いやすい素材といえます。
4、POMの長所
POM樹脂の強みは多岐にわたります。
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強度と耐久性:耐衝撃性があり、長期間使用しても形状や性能を維持
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自己潤滑性:潤滑油なしでも摩擦を抑えられ、機械寿命を延ばせる
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低吸水性:湿度変化による寸法変化が少なく、安定した使用が可能
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成形加工性の良さ:射出成形で複雑形状の大量生産が可能
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リサイクル性:加工時の端材を再利用でき、環境負荷を軽減
これらの長所が、POM樹脂を「エンプラの中でも特に実用性が高い素材」として、
広く普及させています。
5、POMの短所
一方で、POM樹脂には弱点も存在します。
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耐候性の低さ:紫外線や屋外環境には弱く、長期の屋外使用には不向き
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高温特性の制限:連続使用温度は概ね100℃前後で、高温環境下では性能が低下
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酸・強アルカリに弱い:薬品環境においては材質選定に注意が必要
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接着の難しさ:接合時には溶着や機械的固定を工夫する必要がある
これらの短所を理解し、他素材と組み合わせて使用することが実務的なポイントとなります。
6、POMの加工方法
POM樹脂は熱可塑性樹脂であり、加工方法の選択肢が広い点もメリットです。
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射出成形:最も一般的で、大量生産や複雑形状の製品に適応
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押出成形:丸棒、板材、パイプなどの形状を連続的に成形
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切削加工:金属用工作機械で加工でき、精密部品の製造に有効
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ブロー成形:容器や中空部品などを成形可能
加工の自由度が高いため、自動車、家電、医療など、様々な産業分野の製品設計に柔軟に対応できます。
7、POMの代表的な使用例
POM樹脂は、その特性を活かして以下のような分野で活躍しています。
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自動車部品:ギア、ベアリング、ドアロック、燃料系部品など摩擦や強度が求められる部品
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電子・電気部品:コネクター、スイッチ、リレーなど精密さと耐久性が必要な部品
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産業機械:カム、ローラー、チェーンリンクなど摺動・回転部品
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家庭用品:ファスナー、キッチン用品、文房具など日常的に使用されるアイテム
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医療機器:シリンジ部品や分析装置の部材など、精密さが求められる領域
特に自動車産業においては金属の軽量化代替としての需要が高く、今後も利用拡大が見込まれています。
8、代表メーカー別POMブランド比較
POM樹脂は世界各国のメーカーから供給されており、代表的なブランドには次のものがあります。
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ポリプラスチックス:「ジュラコン(DURACON)」ブランドでコポリマーが中心。精密部品に多用。
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デュポン(DuPont):「デルリン(Delrin)」で知られる。ホモポリマー主体で高強度。
同じPOM樹脂でもメーカーによって特性や得意分野が異なるため、用途に合わせた選定が必要です。
9、POM製品の選び方チェックリスト
POM樹脂を採用する際には、以下のポイントを確認すると適切な材料選定につながります。
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使用環境:温度条件、湿度、屋外使用の有無
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要求性能:強度、耐摩耗性、寸法精度のレベル
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加工方法:射出成形・切削加工など製造方法に対応可能か
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コスト面:材料費だけでなく加工費や量産性を含めた総合判断
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メーカー選定:ブランドごとの特徴や供給体制の安定性
このように、複数の観点から検討することが製品品質の安定化とコスト削減につながります。
10、まとめ
POM樹脂(ポリアセタール)は、強度・耐摩耗性・寸法安定性に優れたエンジニアリングプラスチックで、
金属代替素材として幅広い用途で活躍しています。
自動車部品や産業機械、電子機器において信頼性の高い部材として重宝されており、
今後も需要の拡大が見込まれます。
木成ゴム株式会社では、
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まずはぜひお気軽にご相談ください。