ABS樹脂とは?材質・特徴・使用例を詳しく解説

産業分野において広く使用されている樹脂の一つに、ABS樹脂があります。
耐衝撃性・加工性・表面外観の美しさといった特徴を持ち、
自動車部品や家電製品、日用品に至るまで、幅広い分野で活用されている汎用樹脂です。
特に、デザイン性と機能性を両立できる点から、家電やOA機器の筐体、
さらに成形後の塗装・メッキ加工などが求められる分野で高い評価を得ています。
本記事では、ABS樹脂の材質や特徴、長所と短所、加工方法、代表的な使用例、
さらにはメーカーごとのブランド比較や選び方のポイントまで詳しく解説します。
ABS樹脂を導入する際の基礎知識として、ぜひ参考にしてください。
目次
1、ABS樹脂とは?
ABS樹脂は、
・アクリロニトリル(A)
・ブタジエン(B)
・スチレン(S)
を共重合させた熱可塑性樹脂で、
それぞれの特性を組み合わせることで「強度」「耐衝撃性」「成形性」
そして「外観の美しさ」を兼ね備えた素材です。
汎用樹脂の中では比較的コストパフォーマンスが高く、
加工後の塗装やメッキ適性も優れているため、外装部品として非常に重宝されています。
自動車の内外装部品、OA機器、家電製品、玩具(例:LEGOブロック)など、
私たちの生活の中でも広く使われている樹脂です。
2、ABSの材質
ABS樹脂は、三つの成分がそれぞれの役割を持っています。
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アクリロニトリル(A): 耐薬品性や耐熱性を付与
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ブタジエン(B): 耐衝撃性や靭性を付与
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スチレン(S): 成形性や表面光沢を付与
このバランスを調整することで、衝撃に強いグレード、耐熱性に優れたグレード、
メッキ用グレードなど、多様な特性を持つABS樹脂が生み出されています。
色調も豊富に対応できるため、意匠性が求められる製品に適しています。
3、ABSの主な特徴
ABS樹脂の代表的な特徴は以下の通りです。
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高い耐衝撃性:落下や衝撃に強い
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成形加工性:射出成形で複雑形状も容易に製造可能
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表面外観の良さ:光沢性や塗装・メッキ適性に優れる
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バランスの良い物性:剛性、耐熱性、耐薬品性をバランスよく保有
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着色性:多様なカラーリングに対応可能
これらの特徴から、外観と機能を両立する製品設計に適しています。
4、ABSの長所
ABS樹脂のメリットは以下の点にあります。
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優れた耐衝撃性で安心して使用可能
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成形性が良く、複雑なデザインも実現可能
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表面処理の適性が高く、塗装・メッキで高級感のある仕上げが可能
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加工後の寸法安定性が良く、大量生産に適する
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カラーバリエーションが豊富で意匠性が高い
5、ABSの短所
一方で、ABS樹脂には以下の弱点もあります。
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耐候性が低く、屋外での長期使用には不向き
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耐薬品性が一部弱く、特に強酸・強アルカリに注意が必要
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高温環境では特性が低下(連続使用温度は80℃前後)
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燃えやすく、難燃性が求められる場合は添加剤が必要
6、ABSの加工方法
ABS樹脂は熱可塑性樹脂で、幅広い加工方法に対応します。
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射出成形: 最も一般的で、大量生産や複雑な形状に最適
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押出成形: 板材やパイプ、異形材の成形に利用
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切削加工: 簡易試作や少量生産で利用可能
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真空成形: 大型パネルやカバー部品の製造に用いられる
また、加工後の表面処理適性の高さもABSの特徴です。
7、ABSの代表的な使用例
ABS樹脂は以下のような分野で活躍しています。
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自動車部品: インパネ、グリル、ホイールキャップ、ドアトリム
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家電製品: 冷蔵庫、洗濯機、掃除機などの外装
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OA機器: プリンター、コピー機、パソコン筐体
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玩具: LEGOブロックなど高精度な成形品
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日用品: スーツケース、収納ボックス、文房具
特に、見た目と強度が求められる外装部品に多く採用されています。
8、代表メーカー別ABSブランド比較
ABS樹脂は多くのメーカーから供給されています。代表的なブランドは以下の通りです。
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東レ:「トヨラック™」シリーズ コスト重視の汎用グレードから特殊グレードまで
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デンカ:「デンカABS」シリーズ 汎用グレードから特殊グレード(ガラス強化ABSなど)
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テクノUMG:「UMG ABS®」シリーズ スチレン系樹脂(ABS、AESなど)の幅広い展開
各メーカーは、耐衝撃グレード、耐熱グレード、メッキグレードなど、
多様なラインアップを持っており、用途に合わせた選定が可能です。
9、ABS製品の選び方チェックリスト
ABS樹脂を採用する際は、以下の点を確認しましょう。
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使用環境:屋内か屋外か、温度条件はどうか
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要求性能:耐衝撃性、耐熱性、表面外観の仕上がり
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加工方法:射出成形、押出、真空成形など製造工程に対応可能か
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表面処理:塗装・メッキの有無と適性
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コスト面:材料費、加工費、量産性を含めた総合判断
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メーカー:各ブランドの特徴や供給体制の安定性
このように、複数の観点から検討することが製品品質の安定化とコスト削減につながります。
10、まとめ
ABS樹脂は、耐衝撃性・加工性・意匠性に優れた汎用樹脂であり、
自動車、家電、OA機器、日用品など、幅広い分野で利用されています。
特に外装部品やデザイン性を重視する製品において欠かせない素材です。
木成ゴム株式会社では、
「ABS樹脂で部品を加工したい」
「表面処理に適した樹脂を探している」
「意匠性と機能性を両立した素材を選びたい」
といったお客様のニーズに対応できる体制を整えております。
豊富な材料知識と加工実績をもとに、材料選定から試作・量産までトータルでサポートいたします。
まずはぜひお気軽にご相談ください。