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熱硬化性樹脂とは?種類・特徴・使用例を詳しく解説

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熱硬化性樹脂とは?種類・特徴・使用例を詳しく解説

プラスチックや樹脂と聞くと、軽くて加工しやすい素材というイメージを持つ方が多いでしょう。
しかし、樹脂には「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」という2つの大きな種類が存在し、
それぞれ性質も用途もまったく異なります。

中でも熱硬化性樹脂(ねつこうかせいじゅし)は、一度硬化すると再び溶けないという特性を持ち、
耐熱性や絶縁性に優れた高性能材料です。
電気・電子機器、自動車部品、機械構造材など、過酷な環境で使用される製品に欠かせません。

本記事では、熱硬化性樹脂の基本原理から、代表的な4種類の特徴・用途・加工法までを詳しく解説します。
材料選定に悩む設計者や調達担当者、加工業者の方に向けた、実務に役立つ内容です。






  

1、熱硬化性樹脂とは?

熱硬化性樹脂とは、加熱によって化学反応を起こし、分子同士が強固に結合して硬化するタイプの樹脂です。
この硬化反応が起こると、樹脂は「三次元網目構造」を形成し、
再加熱しても溶けたり柔らかくなったりすることはありません。

一度硬化した後は、非常に高い耐熱性・機械的強度・絶縁性を発揮します。
そのため、電気絶縁部品・構造材料・接着剤・耐熱部品など、
苛酷な条件で使われる用途に多く採用されています。



2、熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂の違い

 

樹脂材料は大きく分けて「熱硬化性」と「熱可塑性」の2種類があります。

  • 熱可塑性樹脂
    加熱すると柔らかくなり、冷却すると固まるタイプ。再加熱で再び成形できるため、加工性やリサイクル性が高い。
    例:ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ABS樹脂など。

  • 熱硬化性樹脂
    加熱により化学反応が起こり、分子が架橋して硬化。
    一度硬化すると再溶融できない。耐熱性・絶縁性・寸法安定性に優れる。

つまり、加工性を重視するなら熱可塑性樹脂、耐熱性・強度を重視するなら熱硬化性樹脂が選ばれます。



3、熱硬化性樹脂の基本構造と性質

 

熱硬化性樹脂は、加熱・加圧などによって「架橋反応(かきょうはんのう)」を起こし、
分子同士が化学的に結びつく構造になります。

この化学結合が強固なため、溶融することはなく、高温環境下でも変形しにくい特性を持ちます。

また、架橋密度が高いほど剛性や耐熱性が増し、逆に低いほど柔軟性が増す傾向があります。
この特性を利用して、要求特性に応じた樹脂設計や配合が行われています。

 

 

4、熱硬化性樹脂の主な特徴

 

熱硬化性樹脂の特性をまとめると、以下のようになります。

  • 高い耐熱性:高温下でも軟化しない

  • 優れた寸法安定性:温度変化でも変形が少ない

  • 高い機械的強度:硬く、摩耗しにくい

  • 優れた絶縁性:電気・電子部品に最適

  • 耐薬品性に優れる:酸やアルカリに強い

  • 難燃性が高いものが多い

これらの特性により、電気絶縁体・構造材・機械部品など、幅広い分野で使われています。

 

 

5、熱硬化性樹脂の代表的な種類

 

記事では、産業用途で特に使用頻度の高い以下の4種類に焦点を当てて解説します。

  1. フェノール樹脂(PF)

  2. 紙ベークライト(Paper Bakelite)

  3. 布ベークライト(Cotton Fabric Bakelite)

  4. エポキシ樹脂(Epoxy Resin)


 

6、各樹脂の特徴と使用例

 

● ① フェノール樹脂(Phenol Resin)

フェノール樹脂は、熱硬化性樹脂の中でも最も古く、実績のある樹脂です。
フェノールとホルムアルデヒドを反応させて作られ、硬化後は非常に硬く、耐熱性・耐薬品性に優れます。

主な特徴:

  • 高い耐熱性(150℃以上の環境にも耐える)

  • 優れた電気絶縁性

  • 難燃性が高い

  • 加工後の寸法安定性が良好

主な用途:

  • 電気スイッチ・ソケット・リレーケースなどの絶縁部品

  • 鍋の取っ手やアイロンのハンドルなど家庭用品

  • ブレーキパッドやクラッチフェーシングなど摩擦材

  • 工業用歯車・機械部品

フェノール樹脂は強度・耐熱性・電気特性のバランスが良い万能型素材として、
長年多くの分野で採用されています。


● ② 紙ベークライト(Paper Bakelite)

紙ベークライトは、フェノール樹脂を紙基材に含浸させて硬化させた積層材料です。
軽くて絶縁性が高く、コストパフォーマンスにも優れることから、
電子部品の絶縁板などに広く利用されています。

主な特徴:

  • 軽量で加工性が良い

  • 電気絶縁性に優れる

  • コストが低く量産向き

  • 若干の吸湿性がある

主な用途:

  • 絶縁板、プリント基板のベース材

  • トランス・コイルの絶縁パーツ

  • 電子機器の構造補強部材

  • ジグ、スペーサーなど機械要素

特に電気的特性と加工性のバランスが良く、絶縁部品の標準素材として広く使われています。


● ③ 布ベークライト(Cotton Fabric Bakelite)

布ベークライトは、フェノール樹脂を布(コットン布)に含浸して積層・硬化させた材料です。
紙ベークライトよりも機械的強度に優れ、衝撃や摩耗に強いのが特徴です。

主な特徴:

  • 高い機械的強度と耐衝撃性

  • 摩耗に強く、摺動部品に適する

  • 耐熱性・絶縁性も良好

  • 加工性が高く、切削も容易

主な用途:

  • 歯車・軸受・カムなど機械部品

  • 絶縁ギアや摺動パーツ

  • 機械構造材・断熱部材

  • 自動車・産業機器部品

布ベークライトは「樹脂と繊維の複合材」として、金属代替の軽量部品にも適しています。


● ④ エポキシ樹脂(Epoxy Resin)

エポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂の中でも特に高い接着性・機械的強度・絶縁性を持つ素材です。
硬化剤と反応して硬化し、寸法安定性にも優れます。

主な特徴:

  • 高い機械的強度と接着力

  • 優れた電気絶縁性

  • 吸水性が低く、経年変化が少ない

  • 寸法安定性が非常に高い

主な用途:

  • プリント基板(PCB)のベース材

  • 電子部品の封止剤・接着剤

  • 工業用接着剤・塗料

  • 高性能複合材(CFRP・GFRPなど)のマトリクス樹脂

特に電子機器分野では、エポキシ樹脂は欠かせない絶縁・構造材料として使用されています。


 

7、熱硬化性樹脂の加工方法

 

熱硬化性樹脂の加工では、加熱・加圧・硬化反応を制御することが重要です。主な方法は以下の通りです。

  • 圧縮成形:粉末樹脂を金型に入れ、加熱・加圧して硬化させる方法。精密絶縁部品などに利用。

  • トランスファー成形:樹脂を溶融室で加熱後、金型に押し出して硬化。複雑形状の成形に適する。

  • 注型(キャスティング):液状の樹脂を型に流して化学反応で硬化。大型部品や透明部品に向く。

  • 積層成形:紙・布・ガラス布などに樹脂を含浸し、積層・硬化させる。ベークライトの製造に使われる。

これらの成形では、温度や時間、圧力条件の管理が品質を大きく左右します。




8、熱硬化性樹脂のメリット・デメリット

 

● メリット

  • 高耐熱性・寸法安定性

  • 優れた電気絶縁性

  • 高い機械的強度と剛性

  • 耐薬品性・耐摩耗性が高い

  • 難燃性を有する

● デメリット

  • 再成形・リサイクルが困難

  • 成形時間が長い

  • 衝撃に弱いタイプもある

  • 加工後の修正が難しい

これらの特性を理解し、使用条件に合った樹脂選定を行うことが重要です。


 

9、熱硬化性樹脂を選定する際のポイント

 

熱硬化性樹脂を選ぶ際には、以下の観点を考慮しましょう。

  • 耐熱性が必要か(使用温度域)

  • 機械的強度・耐摩耗性(摺動・構造用途か)

  • 絶縁性(電気部品用途か)

  • コストバランス(量産か小ロットか)

  • 加工方法の適合性(切削・圧縮成形など)

たとえば、

  • 絶縁性を重視 → 紙ベークライト、エポキシ樹脂

  • 機械的強度・耐摩耗性を重視 → 布ベークライト

  • 総合バランス・耐熱性重視 → フェノール樹脂

このように、目的に応じた最適な素材選定が性能を最大化します。


 

10、まとめ

 

熱硬化性樹脂は、耐熱・絶縁・強度といった性能を兼ね備えた高機能素材です。
用途や条件に応じて適切な種類を選定し、最適な加工方法を選ぶことで、
長期的に安定した品質と性能を確保できます。

 

木成ゴム株式会社では、フェノール樹脂・ベークライト・エポキシ樹脂などの、
熱硬化性樹脂を使用した切削加工・試作・量産
に対応しています。

長年の経験に基づくノウハウを活かし、耐熱性・絶縁性・精度が求められる部品にも高品質な加工を実現。
お客様の用途に応じた材料選定から試作・量産まで一貫対応いたします。

「ベークライトの精密加工を依頼したい」「フェノール樹脂製部品の小ロット試作を検討している」
「エポキシ樹脂の切削加工が可能な業者を探している」など、どんなご相談でもお気軽にお問い合わせください。





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