フッ素ゴムの耐候性は?他材質の違いも詳しく解説
自動車部品や産業機器分野において、過酷な環境下でも性能を安定維持できる材料が求められています。
その中でもフッ素ゴムは、特に耐熱性・耐薬品性に優れるハイエンド素材として広く認知されています。
本記事では、フッ素ゴムの特性のうち「耐候性」に焦点を当て、ほかのゴム材質との一般的な違い、
使用時に知っておきたい注意点、想定される用途領域などを分かりやすく解説します。
材料選定にお困りの方や、代替検討をされる調達担当者・購買担当者の方の参考になれば幸いです。
目次
1、フッ素ゴムとは?
フッ素ゴムとは、フッ素原子を含むフッ素系合成ゴムの総称で、一般的に「FKM」とも呼ばれます。
耐熱性、耐油性、耐薬品性、気体透過性の低さなど、
数あるゴム材質の中でもトップクラスの特性を持ち、環境負荷の高い条件下で採用される高機能材料です。
長期間の使用で劣化が進みにくく、シール材やガスケットなど信頼性が要求される用途に適しています。
2、フッ素ゴムの主な種類
フッ素ゴムは一種類ではなく、フッ素含有量や共重合成分の違いから数タイプに分類されます。
一般的な分類は以下の通りです。
・ビニリデンフルオライドを主鎖に持つタイプ
・フッ素含有量を高めた高耐薬品タイプ
・耐寒性を向上した特殊タイプ
これらは、耐薬品性、低温特性、圧縮永久ひずみなどが異なり、
使用環境に応じて適切なグレード選定が必要となります。
3、フッ素ゴムの耐候性が高い理由
フッ素ゴムの耐候性が高い最大の理由は、その化学構造にあります。
炭素―フッ素結合は非常に強固で、熱、紫外線、酸素などによる分子の分解が起こりにくいためです。
この強い結合エネルギーにより、屋外暴露環境や高温環境下でもゴム弾性を維持しやすく、
長期の信頼性が期待できます。
ただし「非常に強い=全く劣化しない」というわけではなく、
使用条件によっては性能変化が起こり得る点は把握しておく必要があります。
4、耐候性に関係する劣化要因
フッ素ゴムの耐候性に影響を与える一般的な劣化要因として、以下のものが挙げられます。
・紫外線や太陽光による表面劣化
・オゾンによるクラック発生
・高温と酸素の複合作用
・湿度や雨水などの水分接触
・温度変化による内部応力の蓄積
フッ素ゴムはこれらに対して総合的に強い性質を示しますが、
極端な条件が重なると劣化リスクは増加します。
したがって、環境条件を適切に見積もり、余裕のある材料選定が求められます。
5、フッ素ゴムの耐候性は他材質とどう違うのか
一般的に、フッ素ゴムの耐候性は多くのゴム材質と比べて上位クラスに位置します。
例えば、天然ゴムは日光やオゾンに弱く、屋外での使用には適しません。
一方、エチレンプロピレンゴム(EPDM)は耐候性に非常に優れていますが、耐油性ではフッ素ゴムに劣ります。
シリコンゴムは高温環境で安定ですが、耐油性に課題がある場合があります。
フッ素ゴムはこれらの特性をバランス良く兼ね備えている点が大きな強みです。
ただし、耐寒性は一般的に得意な分野ではなく、低温域で硬化が進むケースがあるため、
冷凍庫や寒冷地用途ではグレード検討が必要です。
6、フッ素ゴムの使用上の注意点
フッ素ゴムは高性能である反面、注意すべき点も存在します。
・コストが高い
・低温での柔軟性に制限がある
・燃焼時のガスに注意が必要
・溶剤との相性に差がある場合がある
特にコスト面は材料選定に大きく影響します。
要求特性と性能レベルが適合しているか、過剰スペックになっていないかを確認することが重要です。
7、一般的な使用用途
フッ素ゴムはその優れた耐環境性能から、自動車、航空宇宙、化学プラント、半導体製造装置、
オイル&ガス分野など、幅広い産業で採用されています。
代表的な使用例として次のような部品が挙げられます。
・燃料系シールやOリング
・エンジン周辺のガスケット
・化学薬品ラインのパッキン
・真空装置のシール材
・航空機搭載部品の締結シール
長期間に渡り安定した性能が求められる部位に適しています。
8、価格帯と供給面の特徴
フッ素ゴムは、ゴム材料の中でも高価な部類に属します。
これは、原料価格や生産プロセスの複雑さ、供給企業が限られることなどによるものです。
そのため、代替できる材質がないか事前に検討することが、コスト最適化において大切です。
また、輸送状況や原料市況の影響を受けやすい可能性もあるため、
安定調達の観点から複数サプライヤーの確保が望まれます。
9、材料選定時の検討ポイント
フッ素ゴム採用を検討する際は、以下の点を総合的に評価することが一般的です。
・要求温度範囲が適合しているか
・相手流体や薬品との相性
・屋外暴露条件の有無
・長期使用の信頼性要件
・コストとのバランス
特に、他材質で代替できないかどうかを慎重に検討することが重要です。
必要特性を満たす最適な仕様で採用品質を決めることが、調達の現場では求められます。
10、まとめ
フッ素ゴムは、過酷な環境下でも高い信頼性を維持できる高機能ゴムとして、
耐候性・耐熱性・耐薬品性を求められる部品に適した材料です。
一方で、コストや低温特性など、事前に考慮すべきポイントも存在します。
木成ゴム株式会社では、ゴム製品の製造に関して、材料面でのご相談に幅広くお応えしています。
目的や使用条件をお伺いし、一般的な範囲で材質のご提案が可能です。
「どの材質を選べばいいかわからない」「フッ素ゴム以外の選択肢も比較したい」という場合でも、
お気軽にお問い合わせください。
調達・購買担当者の皆様の課題解決に、最適なパートナーとしてサポートいたします。




