圧空成形(圧空成型)とは?特徴・加工法・使用例を解説
プラスチック成形の中でも、真空成形と並んでよく利用されるのが「圧空成形(圧空成型)」です。
圧空成形は、比較的薄いプラスチック板(シート)を加熱して軟化させ、
圧縮空気によって金型に密着させる成形方法です。
真空成形よりも細部の再現性に優れ、成形時間が短いことから、工業製品のカバーやトレイ、
ディスプレイ部品など、幅広い分野で用いられています。
本記事では、圧空成形の基本原理から真空成形との違い、
特徴・メリット・デメリット、代表的な用途や使用素材まで、わかりやすく解説します。
目次
1、圧空成形(圧空成型)とは?
圧空成形とは、加熱して柔らかくしたプラスチックシートを金型に密着させる際に、
圧縮空気を利用して成形する方法です。
英語では「Pressure forming」と呼ばれ、真空成形(Vacuum forming)と並ぶ、
代表的な熱成形技術の一つです。
一般的には、加熱されたシートを金型に被せ、金型とシートの間に圧縮空気を吹き込むことで、
材料を金型の細部まで押し付けます。
その結果、エッジ部分や微細な凹凸も高い精度で再現できるのが特徴です。
2、圧空成形の仕組み
圧空成形の基本工程は、以下のようなステップで構成されます。
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シートの固定:プラスチックシートをフレームに固定します。
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加熱:シートをヒーターで加熱し、軟化させます。
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型との密着:加熱したシートを金型の上にかぶせ、圧縮空気を吹き込みます。
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冷却:シートを冷却し、形状を固定します。
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取り外し・トリミング:成形後、不要部分を切断して仕上げます。
このとき、圧縮空気によって均一な圧力がかかるため、真空成形よりも高精度な形状再現が可能となります。
3、真空成形との違い
圧空成形は、見た目やプロセスが真空成形に似ていますが、両者には明確な違いがあります。
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真空成形:金型とシートの間の空気を吸い出して密着させる。
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圧空成形:外部から圧縮空気を送り込み、金型に押し付ける。
つまり、真空成形は「引っ張る力」で成形し、圧空成形は「押す力」で成形します。
そのため、圧空成形の方がより細部の形状再現に優れ、エッジがシャープに仕上がります。
また、真空成形では深い凹凸部分で空気の抜けが悪くなることがありますが、
圧空成形ではその影響が少なく、厚みの均一性や外観品質が高いのも特徴です。
4、圧空成形の特徴
圧空成形には以下のような特徴があります。
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高精度な形状再現が可能
圧縮空気によって材料をしっかり押し付けるため、細部まで再現できます。 -
短い成形時間
真空を引く時間が不要なため、サイクルタイムが短くなります。 -
金型コストが比較的安価
射出成形のような高精度金型が不要で、アルミや木型でも対応可能です。 -
薄肉成形に適する
軽量で薄い成形品を効率よく作ることができます。
これらの特長から、外観品質が重視される部品や、大型のカバー類に多く利用されます。
5、圧空成形のメリット
圧空成形には次のような利点があります。
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高い意匠性:表面の凹凸・模様を鮮明に再現できる。
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短納期対応:試作から量産までスピーディーに対応可能。
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大面積でも均一な品質:圧力制御により、面全体が均一に密着。
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材料の選択肢が豊富:ABS・PS・PET・PVCなど、多様な樹脂が利用可能。
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射出成形に比べて低コスト:少量生産にも適している。
特に外装カバー・筐体部品・工業用トレイなどでは、
高い表面品質とコストバランスを両立できる成形法として重宝されています。
6、圧空成形のデメリット・注意点
一方で、圧空成形にはいくつかの制約や課題もあります。
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厚みの均一化が難しい:深い形状では一部が薄くなりやすい。
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裏面の精度が低い:片面成形のため、裏面は自由度が低い。
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高圧設備が必要:圧縮空気や安全装置が必須。
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複雑形状には不向き:アンダーカット形状などは成形が困難。
そのため、設計段階では「成形しやすい形状」を意識したデザイン面での工夫が求められます。
7、圧空成形に使用される主な材料
圧空成形に使用される代表的な熱可塑性樹脂は以下の通りです。
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ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)
耐衝撃性と外観品質が高く、家電や車両部品などに使用。 -
PS(ポリスチレン)
軽量で加工しやすく、ディスプレイトレーや包装材に利用。 -
PET(ポリエチレンテレフタレート)
透明性が高く、食品容器やカバーに適しています。 -
PVC(ポリ塩化ビニル)
安価で成形しやすいが、環境対応には注意が必要。 -
PMMA(アクリル樹脂)
透明性と意匠性に優れ、表示パネルなどに使用。
これらの材料は、加熱時の軟化特性と冷却後の寸法安定性が重要視されます。
8、圧空成形の代表的な用途・使用例
圧空成形は、次のような幅広い分野で活用されています。
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産業機械カバー:外装カバー・パネル・制御ボックスなど。
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自動車部品:内装パネル、ヘッドランプカバーなど。
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医療機器:筐体・トレイ・保護ケース。
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家電製品:テレビ背面カバー、空気清浄機外装など。
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物流関連:搬送トレイ・通い箱・部品仕分けトレイ。
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広告・ディスプレイ:立体看板・POPパネル。
中でも意匠面を重視した製品や軽量・低コスト化が求められる部品で、高い効果を発揮します。
9、圧空成形の加工工程の流れ
圧空成形は、以下のような流れで製品化されます。
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設計・金型製作:製品形状をもとに金型を製作。
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シートの加熱:適正温度(80~150℃程度)まで加熱。
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圧空成形:圧縮空気を送り込み、金型に密着。
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冷却・離型:成形後、冷却して取り外す。
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トリミング・仕上げ:不要部分をカットし、穴あけ・加工を行う。
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検査・出荷:外観や寸法を確認し、出荷。
このように、短い工程で量産性の高い成形品を作れる点が、圧空成形の大きな魅力です。
10、まとめ
圧空成形は、圧縮空気を利用して高精度なプラスチック成形を行う技術であり、
真空成形よりも美観・再現性・生産効率に優れた製品を実現できます。
薄肉・大型部品から外観カバーまで、幅広い用途で採用される理由は、
その高い意匠性とコストパフォーマンスにあります。
木成ゴム株式会社では、圧空成形品に対応しており、ご要望に合わせた最適な加工方法をご提案しています。
金型製作から、試作・量産まで、ワンストップで対応可能です。
圧空成形をはじめとしたプラスチック加工に関するご相談は、
ぜひ木成ゴム株式会社までお気軽にお問い合わせください。




