エーテル系とエステル系の違いとは?ウレタンゴム解説

ウレタンゴムは、高い耐摩耗性や機械的強度を誇るため、
工業用部品から日用品まで幅広く利用されています。
そのウレタンゴムには大きく分けて 「エーテル系」と「エステル系」 という2種類があります。
本記事では、両者の違いや特徴、適した用途まで詳しく解説します。
ウレタンゴムの材料選定に迷っている方や、製品開発関係者の方はぜひ参考にしてください。
1、ウレタンゴムとは?
ウレタンゴムは、イソシアネートとポリオールの反応によって得られる高分子材料です。
一般的なゴムに比べて、以下のような特性を持ちます。
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高い耐摩耗性
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高強度・高弾性
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耐油性や耐薬品性に優れる(種類による)
これらの特性から、ウレタンゴムはキャスター、ロール、パッキン、
シール材、工業用ライニング材など多様な場面で使用されています。
そして、このウレタンゴムを分類する上で重要なのが「ポリオールの種類」です。
ポリオールには ポリエーテル系 と ポリエステル系 があり、
それぞれを用いたものが「エーテル系ウレタンゴム」と「エステル系ウレタンゴム」と呼ばれます。
2、エーテル系とは?
エーテル系ウレタンゴムは、ポリエーテルポリオールを原料としたウレタンゴムです。
特徴
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耐加水分解性に優れる:水分や湿気に強く、加水分解による劣化が少ない。
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低温特性が良好:寒冷地でも硬化しにくく、柔軟性を保ちやすい。
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耐摩耗性が高い:衝撃や摩耗に強く、長寿命。
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耐薬品性は中程度:エステル系に比べると油や溶剤にはやや弱い。
デメリット
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耐熱性はエステル系に劣る。
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機械的強度(引張強さ、引裂強さ)はエステル系よりやや低め。
主な用途
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水回りの部品(ポンプ部品、バルブシールなど)
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キャスター、車輪
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寒冷地向けの工業製品
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加水分解が懸念される環境下のパッキン・シール
3、エステル系とは?
エステル系ウレタンゴムは、ポリエステルポリオールを原料としたウレタンゴムです。
特徴
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高強度:引張強さや引裂強さが高く、機械的特性に優れる。
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耐油性が高い:鉱物油や潤滑油に強い。
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耐摩耗性も良好:特に乾燥環境では性能を発揮。
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耐熱性に優れる:高温下でも特性を維持しやすい。
デメリット
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加水分解に弱い:湿気や水分で劣化しやすい。
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低温特性が劣る:寒冷環境では硬化・脆化が起きやすい。
主な用途
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機械部品(ギア、ベアリングブッシュなど)
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油圧シール、Oリング
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高荷重下のキャスターや搬送ローラー
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高温・高圧環境で使用される産業部品
4、両者の違いを解説
エーテル系とエステル系の大きな違いは、どんな環境で強みを発揮するかにあります。
まず、エーテル系ウレタンゴムは「水や湿気に強い」ことが最大の特徴です。
加水分解に対して耐性があり、水がかかる環境や高湿度の場所でも長く使用できます。
さらに低温でも柔軟性を失いにくいため、寒冷地での使用にも適しています。
その反面、耐熱性や耐油性はエステル系に比べるとやや劣ります。
一方、エステル系ウレタンゴムは「強度と耐油性に優れる」点が特徴です。
引張強さや引裂強さが高く、機械的な負荷に耐えられるため、
産業機械の部品や油圧機器のシール材などに多く採用されています。
また、耐熱性も高いため高温下での使用にも向いています。
ただし、湿気や水分には弱く、加水分解による劣化が起こりやすい点には注意が必要です。
まとめると、水分や寒冷環境に強いのはエーテル系、強度や耐油性が必要な場面ではエステル系、
というように、用途や環境に応じて選び分けることが重要になります。
5、選定時のポイント
ウレタンゴムを選ぶ際には、以下の条件を確認することが重要です。
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使用環境(湿気・温度・薬品・油の有無)
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必要な強度(引張強さ・耐摩耗性・耐荷重)
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温度範囲(低温環境か、高温環境か)
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寿命の要求水準(長期使用か、短期部品交換前提か)
たとえば、食品加工ラインの洗浄設備では水や蒸気が多いため「エーテル系」が向いています。
一方、自動車や油圧機器のシール材には「エステル系」が採用されることが多いです。
6、まとめ
エーテル系とエステル系のウレタンゴムは、同じ「ウレタンゴム」という括りでありながら、
性質が大きく異なります。
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エーテル系:耐水性・耐加水分解性・低温特性に優れる → 水回り・寒冷地に最適
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エステル系:高強度・耐油性・耐熱性に優れる → 機械部品・油圧部品に最適
適材適所で正しく選定することにより、製品の寿命や信頼性が大きく向上します。
ウレタンゴムを導入・設計する際は、ぜひ「エーテル系」と「エステル系」の違いを理解し、
環境に合ったタイプを選んでみてください。
木成ゴム株式会社では、エーテル系・エステル系いずれのウレタンゴムも取り扱っており、
用途や条件に合わせた最適な素材をご提案できます。
製品開発でお悩みの方はぜひお気軽にご相談ください。