NBR(ニトリルゴム)とは?特徴や使用例を詳しく解説

産業分野において幅広く利用されているゴム素材のひとつに、NBR(ニトリルゴム)があります。
耐油性・耐摩耗性・機械的強度に優れ、特に 自動車、石油・化学分野 で欠かせない素材です。
本記事では、NBRゴムの基本特性からシート・押出品・パッキンといった製品形態、
規格や認証との関係、導入事例まで詳しく解説します。
目次
1、NBRゴムとは?
NBRゴムは、アクリロニトリル(AN)とブタジエン(BD)を共重合して作られる合成ゴムです。
1930年代にドイツで開発され、現在では「ニトリルゴム」の名称で広く普及しています。
つまり、「NBR」「ニトリルゴム」「アクリロニトリル・ブタジエンゴム」は、
呼び方が違うだけで実際は同じもの を指します。
-
NBR:Nitrile Butadiene Rubber の略称
-
ニトリルゴム:日本語表記
-
アクリロニトリル・ブタジエンゴム:化学的な正式名称
特に耐油性に優れることから、油圧機器や自動車部品において不可欠な材料とされています。
2、NBRゴムの主な特徴
-
耐油性:鉱物油・動植物油・燃料油に対して高い耐性を持つ
-
耐摩耗性:摩耗に強く、摺動部材に適用可能
-
機械的強度:引張強さ・引裂強さに優れ、密封性が高い
-
耐熱性:100℃前後まで安定使用可能
-
弱点:耐候性・耐オゾン性には劣るため屋外環境では注意が必要
3、NBRゴムの代表的な使用例
-
自動車分野
燃料ホース、Oリング、ガスケット、オイルシール、燃料系パッキン
-
産業機械分野
油圧ホース、シール材、ローラー、ガスケット
-
石油・化学分野
ポンプ用パッキン、化学薬品輸送ホース、配管シール材
-
一般工業用
手袋(耐油性ゴム手袋)、搬送ベルト、ガスケット、パッキン類
4、NBRゴムシートについて
NBRゴムをシート状に加工した製品で、主に油や燃料との接触がある現場で利用されます。
用途例
-
油圧機器用ガスケット材
-
工場床材(耐油用途)
-
配管接続部のシール材
規格例(あくまで一例です)
-
厚み:0.5mm~50mm
-
硬度:40~90(JIS A硬度)
-
色:黒が主流
-
特殊仕様:耐熱グレード、補強布入りシートなど
特徴
-
高い耐油性を活かして潤滑油・燃料油環境で長期間使用可能
-
打ち抜き加工が容易で、パッキンやガスケットに最適
5、NBRゴム押出品について
押出成形によりチューブや異形断面に加工した製品です。
用途例
-
燃料・潤滑油用ホース
-
配管保護チューブ
-
工業機器シール材
断面形状例
-
丸型(チューブ、ロッド)
-
角型(スクエア材)
-
Oリング材、U字型、E字型などカスタム形状
特徴
-
長尺製品の供給が可能
-
耐油・耐摩耗性を備え、油圧・燃料系に最適
-
JIS規格に対応した製品も多く流通
6、NBRゴムパッキンについて
パッキンは、機械や配管の接合部で漏れ防止を担う重要部品です。
NBRは特に耐油性が求められる環境で広く採用されています。
用途例
-
自動車エンジン回りのオイルシール・燃料系シール
-
油圧機器のシール材
-
配管設備や石油・化学プラントの接続部材
特徴
-
潤滑油や燃料油環境で優れた耐久性を発揮
-
摩耗や圧縮永久歪みに強く、長寿命
-
シート材の打ち抜き加工や押出材の加工で製作可能
7、NBRゴム導入のメリット
NBRを採用することには、以下のような明確なメリットがあります。
-
耐油性に特化
鉱物油や燃料油が存在する環境において最適。 -
コストパフォーマンス
他の特殊ゴムに比べて比較的安価で、産業用途に導入しやすい。 -
幅広い硬度・形態
シート、押出品、パッキンなど多様な形で供給可能。 -
規格適合による信頼性確保
JIS・ISO・RoHSといった規格対応品も豊富で安心。
8、ゴム硬度の基礎知識
NBRゴム製品を選定する際に欠かせない指標の一つが「硬度」です。
硬度はゴムの柔らかさや固さを示すもので、シートやパッキン、押出品の性能に大きく影響します。
JIS規格に基づく硬度測定
-
日本では JIS K 6253 に準拠
-
単位は「度(Hs)」で表記
-
0に近いほど柔らかく、100に近いほど硬い
NBRゴムは 40~90程度の硬度範囲 で流通し、柔らかいシール材から高硬度の耐摩耗部材まで対応可能です。
特に 硬度70°(ショアA)前後のグレードが標準的に採用 されており、
バランスの取れた強度・柔軟性・耐油性を実現できます。
自動車のオイルシールやOリング、油圧機器用パッキンではこの70°前後の硬度がよく選ばれています。
デュロメータ(硬度計)
-
デュロメータA型:一般的なNBR製パッキンやシート材に使用
-
デュロメータD型:高硬度NBRや樹脂寄り材料に使用
ショア硬度との関係
-
ショアA硬度 ≒ JIS A硬度
-
例:ショアA 60 → 標準的な柔らかさでガスケットや工業シートに多い
-
例:ショアA 70 → 汎用的で最も多く採用される硬度(Oリング・パッキン向き)
-
例:ショアA 90 → 高硬度で耐摩耗性を重視する用途に使用
NBRにおける硬度選定のポイント
NBRは硬度バリエーションが豊富で、60~70°の中硬度グレード が標準的に利用されます。
柔らかめのグレードはシール性を重視する部品に適し、
硬めのグレードは摩耗や圧縮に強いため油圧・機械部品に適しています。
用途に応じて適切な硬度を選定することで、NBR本来の 耐油性・密封性・耐久性 が最大限発揮されます。
9、NBRゴム製品の選び方チェックリスト
NBRゴムを導入する際は、以下を確認することが重要です。
-
✅ 使用環境は油や燃料に接触するか
-
✅ 耐候性・耐オゾン性が必要か(屋外環境では注意)
-
✅ 必要な硬度・強度はどの程度か
-
✅ 製品形状(シート、押出品、パッキンなど)
-
✅ 規格適合の有無(FDA、RoHS、ISOなど)
-
✅ コストと性能のバランスをどう評価するか
これらを事前に整理することで、最適な材料選定とスムーズな調達が可能になります。
10、まとめ
NBR(ニトリルゴム/アクリロニトリル・ブタジエンゴム)は、
耐油性・耐摩耗性・機械的強度を兼ね備えた合成ゴムです。
シート・押出品・パッキンといった多様な形態で供給可能であり、
自動車・産業機械・石油化学分野など幅広く活用されています。
「優れた耐油性」と「コストパフォーマンス」により、
今後も産業用途における重要な素材であり続けるでしょう。
木成ゴム株式会社では、 NBRゴムシート・押出品・パッキンなど多様な製品を取り扱っております。
用途や条件に合わせて最適な材料をご提案し、試作段階から量産まで一貫したサポートが可能です。
「耐油性のあるパッキンを探している」
「少量からでも対応してほしい」など、どんなご相談でもお気軽にお問い合わせください。