EPDM(エチレンプロプレンゴム)とは?特徴・使用例を解説

産業分野で幅広く利用されているゴム素材の一つに、EPDM(エチレンプロプレンゴム)があります。
耐候性・耐熱性・耐薬品性に優れ、特に 自動車、建築、電気・電子分野 で欠かせない素材です。
本記事では、EPDMの基本特性からシート・押出品・パッキン・スポンジ品といった製品形態、
規格や認証との関係、導入事例、さらにEPDMとEPTの違いまで詳しく解説します。
目次
1、EPDMゴムとは?
EPDMは、エチレン (Ethylene) と プロピレン (Propylene) に、
微量のジエン成分を共重合して作られる合成ゴムです。
1960年代以降、工業用途に広く採用され、現在では世界的に主要な汎用ゴムのひとつとなっています。
呼称の違い:
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EPDM:Ethylene Propylene Diene Monomer Rubber の略称
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エチレンプロピレンゴム:日本語表記
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EPDMゴム:一般的な呼び方
EPDMは他の汎用ゴムと比較して、耐候性・耐オゾン性・耐熱性 に非常に優れている点が最大の特徴です。
2、EPDMとEPTの違い
EPDMと似た表記として「EPT」という名称もよく登場します。
両者はしばしば混同されますが、次のような違いがあります。
◆EPDM
・Ethylene Propylene Diene Monomer Rubber の略
・ジエン成分を少量含むことで、硫黄加硫が可能
・自動車シール材や防水材など、汎用的に幅広く使用
◆EPT
・Ethylene Propylene Terpolymer の略
・EPDMとほぼ同義だが、特に三元共重合体であることを強調した表現
・かつては「EPR(エチレンプロピレン共重合体ゴム:二元系)」と区別するために
「EPT(三元系)」と呼ばれることが多かった
つまり、EPDMとEPTは基本的に同じ材料を指すと考えて差し支えありません。
現在の業界標準では「EPDM」が一般的な呼び方として定着しており、
技術資料や規格書でもEPDM表記が用いられるのが主流です。
3、EPDMゴムの主な特徴
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耐候性:紫外線・オゾン・雨風に強く、屋外で長期間使用可能
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耐熱性:120℃程度までの高温環境に対応可能
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耐寒性:低温下(-40℃前後)でも硬化やひび割れが少ない
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耐薬品性:酸・アルカリ・アルコール類に強い(ただし油には弱い)
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電気絶縁性:優れた絶縁性を持ち、電気・電子用途でも利用可能
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弾性保持性:長期間使用しても弾力性を維持しやすい
4、EPDMゴムの代表的な使用例
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自動車分野
ドアシール(ウェザーストリップ)、ラジエーターホース、吸気・排気系部品
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建築/防水分野
屋上防水シート、外壁シーリング材、サッシ用パッキン、屋外配管カバー
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電気/電子分野
絶縁材、ケーブル保護チューブ、防水シール
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一般工業用
搬送ベルト、ガスケット、工業用シール材
5、EPDMゴムシートについて
EPDMをシート状に加工した製品は、屋外用途や耐薬品性を求められる環境で多く使われます。
用途例
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屋上や屋外設備の防水材
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配管や機器のガスケット
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床材、緩衝材
規格例(あくまで一例です)
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厚み:0.5mm~50mm
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硬度:40~80(JIS A硬度)
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色:黒が主流、グレー・白などもあり
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特殊仕様:耐熱グレード、補強布入り、導電グレードなど
特徴
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紫外線やオゾンに対して高い耐久性
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酸やアルカリに強い
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加工が容易でパッキンやガスケットの打ち抜きに適する
6、EPDMゴム押出品について
押出成形によって、チューブや異形断面材として供給されます。
用途例
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自動車用ウェザーストリップ
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建築用シーリング材
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配管保護チューブ
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電気ケーブルの保護材
断面形状例
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丸型(チューブ、ロッド)
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角型(スクエア材)
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U字型、P字型、E字型など
特徴
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長尺供給が可能
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耐候・耐薬品性に優れる
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JIS・ULなどの規格対応品あり
7、EPDMゴムパッキンについて
接合部での防水・防塵・漏れ防止に欠かせない部品です。
用途例
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自動車ドアやエンジン回りのシール
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建築物の防水パッキン(サッシ、外壁、屋根)
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水処理設備や配管接続部品
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電気機器ケースの防水シール
特徴
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屋外でも劣化しにくい
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酸やアルカリの存在する環境でも使用可能
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シート材の打ち抜きや押出材の加工で製作可能
8、発泡EPDM(スポンジ品)について
EPDMを発泡させたスポンジ製品は、軽量かつ柔軟性に優れ、
緩衝材やシール材として広く利用されています。
用途例
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自動車用ウェザーストリップ(ドアやトランクの密閉用)
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建築用防水パッキン、目地材
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家電製品の防振材、クッション材
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電気機器の防塵・防水シール
特徴
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軽量化:発泡構造により密度が低く軽量
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柔軟性:凹凸部にも追従しやすい
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シール性:低い圧縮荷重で密封可能
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断熱・遮音性:空気層を持つため断熱・吸音効果も発揮
形態
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シート、ロール、テープ状
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押出成形による異形スポンジ材
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両面テープ付き加工品
9、EPDMゴム導入のメリット
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長寿命化によるコスト削減
→ 屋外環境でも劣化しにくく交換サイクルを延長 -
安全性の向上
→ 難燃グレードや環境規制対応品あり -
幅広い用途に対応可能
→ シート・押出・パッキン・スポンジまで多様な形態で供給 -
規格適合品が豊富
→ JIS・RoHSなど、輸出や品質保証面でも安心
10、ゴム硬度の基礎知識
EPDMゴム製品を選定する際に欠かせない指標の一つが「硬度」です。
硬度はゴムの柔らかさや固さを示すもので、シートやパッキン、押出品の性能に大きく影響します。
JIS規格に基づく硬度測定
日本では JIS K 6253 に準拠してゴムの硬度を測定します。
一般的に使用されるのは JIS A硬度 と呼ばれる基準です。
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単位は「度(Hs)」で表記される
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0に近いほど柔らかく、100に近いほど硬い
EPDMゴムは 40~90程度の硬度範囲 で流通しており、
柔らかいシール材から硬めの工業用シートやガスケットまで幅広く対応可能です。
特に 60~70°前後のグレード が標準的に使われ、
自動車用ウェザーストリップや建築用シーリング材などで多く採用されています。
デュロメータ(硬度計)
硬度測定には デュロメータ と呼ばれる専用の測定器を使用します。
針(インデント)がゴム表面に押し付けられ、その沈み込み量から硬度が算出されます。
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デュロメータA型:シール材やパッキンなど一般的なCRゴム製品に使用
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デュロメータD型:硬めの樹脂や高硬度ゴムに使用
ショア硬度との関係
ゴムの硬度は「ショア硬度」と呼ばれることもあります。
これはデュロメータによる測定法の一つであり、ショアA硬度 = JIS A硬度にほぼ相当します。
例)
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ショアA硬度 40 → 柔らかめ(緩衝材や一部のシール材向き)
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ショアA硬度 60 → 標準的(パッキンや工業用シートに多い)
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ショアA硬度 80 → 硬め(耐摩耗部品や支持材に使用)
EPDMにおける硬度選定のポイント
EPDMは柔軟な低硬度品から、高荷重や耐摩耗に対応できる高硬度品までラインナップが揃っています。
特に 耐候性・耐オゾン性 に優れる特性を活かし、
屋外環境で使用されるガスケットやシール材には 60~70°前後の中硬度グレード が多く採用されています。
一方で、支持材や工業用シートなど強度が求められる用途には 80~90°の高硬度グレード が適しています。
用途に応じて適切な硬度を選ぶことで、製品の 耐久性・密封性・耐候性 を最適化することが可能です。
11、EPDMゴム製品の選び方チェックリスト
CRゴムを導入する際は、以下を確認することが重要です。
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✅ 使用環境は屋内か屋外か
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✅ 温度条件(高温・低温への対応)
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✅ 薬品やオゾンへの接触有無
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✅ 必要な硬度・強度
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✅ 製品形状(シート、押出、パッキン、スポンジ)
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✅ コストと性能のバランス
これらを事前に整理することで、最適な材料選定とスムーズな調達が可能になります。
12、まとめ
EPDM(エチレンプロピレンゴム)は、耐候性・耐熱性・耐薬品性 に優れた合成ゴムで、
シート・押出品・パッキン・発泡スポンジといった多様な形態で利用されています。
また、EPDMとEPTは基本的に同じ材料を指す呼称であり、
現在では「EPDM」が主流の呼び方です。
自動車・建築・電気・機械など、幅広い分野で重要な素材であり、
「長期耐久性」と「環境適応性」に優れていることから、
今後も産業用途で高い需要が見込まれます。
木成ゴム株式会社では、EPDMゴムの 押出品・パッキン・スポンジ品 などを取り扱っております。
用途や条件に合わせた最適な材料提案から、試作・量産まで一貫対応が可能です。
「屋外でも長持ちするパッキンが欲しい」
「発泡EPDMで軽量なシール材を探している」など、
どんなご相談でもお気軽にお問い合わせください。