樹脂の切削加工とは?種類・加工方法・使用例を解説
樹脂を削って形を作る「切削加工」は、試作や精密部品製作に欠かせない加工技術です。
金型を使う成形加工とは異なり、少量生産や短納期対応に優れ、
1個からでも高精度な部品を製作できるのが特徴です。
特に、電子機器や医療機器、半導体装置などでは、寸法精度・絶縁性・耐薬品性が求められるため、
樹脂切削加工の需要が年々高まっています。
一方で、「どのような種類の加工方法があるのか」「どんな樹脂が加工に向いているのか」、
といった疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、樹脂切削加工の基礎知識から、主な加工種類、
使用例、品質管理のポイントまでをわかりやすく解説します。
目次
1、樹脂の切削加工とは?
樹脂の切削加工とは、プラスチック材料を機械的に削って形を作り出す加工方法のことです。
金属加工で使われる旋盤やマシニングセンタなどの機械を用いて、
樹脂素材を高精度に削り、設計通りの形状に仕上げます。
射出成形や押出成形といった成形加工と異なり、金型を作らずに1個からでも加工できるのが特徴です。
そのため、試作や少量生産、複雑形状の製品製作に適しており、
電子部品、医療機器、精密機械部品など幅広い分野で利用されています。
2、樹脂切削加工の特徴とメリット
樹脂の切削加工には、他の加工方法にはない多くの利点があります。
主な特徴は次のとおりです。
① 高精度な加工が可能
NC制御機やマシニングセンタを使うことで、ミクロン単位の精密加工が可能です。
公差の厳しい機械部品や試作品にも対応できます。
② 少量・多品種生産に最適
金型を必要としないため、1個からの製作や短納期対応が容易です。
開発段階の試作や、カスタム仕様のパーツ製造にも向いています。
③ 材料の選択自由度が高い
POM、PEEK、PTFE、ナイロン、アクリルなど、用途に応じたさまざまな樹脂を選択可能です。
成形品では得にくい物性を活かすことができます。
④ 成形では難しい形状も対応可能
成形では困難な段付きや内径加工、薄肉形状、ねじ切りなども切削であれば対応可能です。
3、樹脂切削加工で使われる主な材料
切削加工に用いられる樹脂は、熱可塑性樹脂が中心です。以下は代表的な素材です。
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POM(ポリアセタール):寸法安定性と摺動性に優れる。ギア・治具・機械部品に使用。
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PEEK(ポリエーテルエーテルケトン):耐熱・耐薬品性が高く、精密機器や航空部品に利用。
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PTFE(四フッ化エチレン樹脂):摩擦が非常に少なく、電気絶縁性にも優れる。
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MCナイロン/66ナイロン:強度と靭性が高く、歯車やローラーなどに最適。
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アクリル(PMMA)・ポリカーボネート(PC):透明性を活かしてカバーや窓材に使用。
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PVC(塩化ビニル)・PP(ポリプロピレン):耐薬品性に優れ、化学装置部品などに利用。
樹脂ごとに削りやすさや反りやすさが異なるため、加工ノウハウと設備選定が重要になります。
4、樹脂切削加工の基本工程
樹脂の切削加工は、主に次のような工程で行われます。
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材料準備:丸棒、板材、ブロック材などの形で仕入れ。
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切断・荒加工:目的サイズより少し大きめにカットし、基準面を出す。
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精密切削加工:NC旋盤やマシニングセンタなどを使い、寸法・形状を仕上げる。
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仕上げ・検査:バリ取り、面粗度調整、寸法測定などを行う。
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洗浄・出荷:切削油や粉を除去し、製品を包装して納品。
金属よりも熱変形しやすい樹脂は、加工条件(回転数・送り速度・工具形状)を慎重に設定することが重要です。
5、樹脂切削加工の主な種類
ここでは、代表的な加工方法を詳しく解説します。
① 旋盤加工(NC旋盤加工)
素材を回転させながら刃物で削る加工です。円筒形状、ねじ切り、テーパー形状などの製作に最適。
NC制御によって高精度・高再現性の加工が可能です。
丸棒材を使った軸・リング・スペーサーなどの部品で多用されます。
② フライス加工
回転工具で平面や溝、段差などを削り出す加工です。
手動式やNCフライス盤があり、板材加工や溝加工に適しています。
③ マシニングセンタ加工
NC制御により自動で複数方向から切削できる装置です。
複雑な3次元形状、ポケット加工、タップ加工など、多機能かつ高精度な仕上がりが得られます。
治具、精密部品、ケースなど幅広く対応できます。
④ 5軸加工
3軸では届かない角度からの切削を可能にした高精度加工技術です。
曲面や斜面の多い製品を一度で仕上げられるため、航空機部品や医療機器で重宝されます。
⑤ ドリル加工・穴あけ加工
各種ドリルを用いて穴をあける加工です。下穴あけからリーマ仕上げ、ねじ加工まで対応可能です。
樹脂では熱で溶けやすいため、低速回転と適切な冷却が重要です。
⑥ ルーター加工
主にアクリルやポリカーボネートなどの板材を切り抜く際に用いられます。
NCルーターによって、外形カットや溝彫り、窓抜きが容易に行えます。
⑦ レーザー加工
レーザー光で樹脂を溶かし切断する方法です。
精密な輪郭加工や刻印に適しており、試作品や名板などに利用されます。
⑧ プロッタ加工
カッター刃を使い、薄板材やフィルム状樹脂を切り抜く方法です。試作品やシール材の製作に適しています。
このように、目的の形状や材質、精度に応じて最適な加工法を選定することが、品質を左右します。
6、樹脂切削加工の精度と品質管理
樹脂は温度や湿度によって寸法が変化しやすいため、金属よりも管理が難しい素材です。
加工精度を保つためには、次のような対策が行われます。
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加工前後の温度管理を徹底し、寸法変化を防止。
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加工時のクランプ圧を適切に調整し、変形を抑える。
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工具摩耗や切削条件を最適化して、バリや溶けを防ぐ。
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三次元測定機や投影機で全数検査を行い、寸法精度を確認。
これらの取り組みにより、±0.01mm単位の高精度加工も実現可能です。
7、樹脂切削加工の代表的な使用例
樹脂の切削加工は、あらゆる産業分野で活用されています。
代表的な使用例は以下の通りです。
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電子・電気部品:絶縁性を活かした端子台、ケース、スペーサー。
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医療機器:PEEKやPTFEによる精密部品、試験治具。
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食品機械:衛生性の高い樹脂ローラーやガイド部品。
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自動車部品:試作ギア、治具部品、検査装置パーツ。
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半導体製造装置:耐薬品性に優れたPTFE・PFA部品。
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研究・開発用途:短納期試作品、ワンオフ部品。
このように、樹脂切削加工は試作から量産前検証、治具製作まで幅広く利用されています。
8、成形加工との違い
樹脂加工には「切削加工」と「成形加工」の2つの大きな手法があります。
切削加工は、材料を削って形を作るため、金型不要・短納期が強みです。
一方、成形加工(射出成形や押出成形など)は、金型を使って大量生産に向く手法です。
つまり、
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少量・多品種・高精度なら「切削加工」
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大量生産・低コスト化なら「成形加工」
と使い分けるのが一般的です。
試作品を切削で製作し、量産段階で成形に切り替えるケースも多く見られます。
9、樹脂切削加工の注意点とコスト要因
樹脂は金属に比べて柔らかく、熱膨張が大きいため、加工時に反りや溶けが起こりやすい素材です。
以下の点に注意する必要があります。
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工具温度の上昇を防ぐため、適切な回転数・送り速度を設定する。
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素材内部の応力を考慮し、必要に応じてアニール(応力除去)処理を行う。
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コスト要因としては、材料費・加工時間・段取り回数・精度要求などが挙げられます。
加工条件と設計段階での工夫により、コストダウンと品質維持の両立が可能です。
10、まとめ
木成ゴム株式会社では、ゴムや樹脂の精密切削加工を長年手がけており、
POM・PEEK・PTFE・MCナイロンなど多様な素材に対応可能です。
NC旋盤、マシニングセンタ、5軸加工機など、
試作品から量産品まで、高精度・短納期で製作いたします。
樹脂やゴムの切削加工でお困りの方は、ぜひ木成ゴム株式会社までご相談ください。
試作1個から、最適な材料選定・加工方法をご提案いたします。




