フェノール樹脂とは?材質・特徴・使用例を詳しく解説
フェノール樹脂は、長年にわたり電気・自動車・産業機器など、
幅広い分野で利用されてきた「熱硬化性樹脂」の代表格です。
耐熱性・耐薬品性・機械特性に優れ、さらに寸法安定性の高さから、
現代でも金属代替材料として重要な位置を占めています。
本記事では、フェノール樹脂の基礎知識から特徴、成形方法、布ベークライト・紙ベークライトの違い、
さらには代表メーカーまで、専門的な観点から分かりやすく解説します。
目次
1、フェノール樹脂とは?
フェノール樹脂は、フェノールとホルムアルデヒドの縮合反応によって得られる熱硬化性樹脂の一種です。
世界で最初に合成されたプラスチックとしても知られ、耐熱性や耐摩耗性に優れることから、
金属代替材料として多くの産業で採用されています。
熱硬化性樹脂であるため、一度硬化すると再溶融しないという性質を持ち、
耐熱部品として安定した性能を発揮します。
2、フェノール樹脂の材質と化学的性質
フェノール樹脂は、フェノール環と架橋構造が組み合わさることで非常に強固な三次元構造を形成します。
この構造が、以下のような特徴に直結します。
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高い耐熱性
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変形しにくい優れた寸法安定性
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耐薬品性(特に酸や油に強い)
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炎に強く自己消火性がある
さらに、充填材(フィラー)を混合することで、機械特性や電気特性を調整し、
用途に合わせた物性の最適化が可能です。
3、フェノール樹脂の主な特徴
フェノール樹脂が幅広い分野で使用される理由として、以下のような優れた特徴が挙げられます。
■ 優れた耐熱性
200℃前後でも安定した強度を保ち、高温環境での使用に適します。
■ 電気絶縁性の高さ
電気・電子部品の絶縁材料として古くから利用され、現在でも信頼性の高い絶縁樹脂のひとつです。
■ 機械的強度が高い
ガラス繊維や布・紙で強化することでさらに強度が増し、ギア・ベアリングなどの高荷重部品にも使用できます。
■ 耐薬品性に優れる
特に酸・油に強く、化学工場の設備部品にも採用されています。
■ コストバランスが良い
高性能ながら比較的低コストで成形できる点も、産業用途で選ばれる理由です。
4、フェノール樹脂の種類
フェノール樹脂には「フィラー(補強材)」を加えた強化グレードが存在し、
その中でも代表的なのが 布ベークライト と 紙ベークライト です。
■布ベークライト(布入りフェノール樹脂)
布(主に綿布)を基材としてフェノール樹脂を含浸・硬化させた材料です。
特徴:
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高い機械強度
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衝撃に強く割れにくい
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摩擦特性に優れ、摺動部品に適する
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ギア、プーリー、機械部品に広く使用
布の織り構造が衝撃吸収性や耐摩耗性を生み、工業部品の定番素材となっています。
■紙ベークライト(紙入りフェノール樹脂)
クラフト紙や絶縁紙にフェノール樹脂を含浸し、積層して硬化させた材料です。
特徴:
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電気絶縁性が高い
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軽量で加工しやすい
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コストが比較的低い
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電気絶縁板・端子台・治具などに使用
紙を使うことで軽量性と絶縁性に優れ、電気産業で広く利用されています。
5、フェノール樹脂の主な加工方法
フェノール樹脂は硬く脆い性質を持ち、布ベークライト・紙ベークライトなどの積層材では、
繊維方向によって削れ方が変わります。
ここでは、代表的な3つの加工方法をシンプルに紹介します。
① 旋盤加工
丸棒材の外径加工や円筒形状の部品でよく使われる加工です。
フェノール樹脂は割れやすいため、低めの回転数 と 安定した送り がポイントになります。
② フライス加工
板材の平面加工や側面加工に適した方法です。
熱がこもると焦げやすいので、浅い切り込み や 断続的な加工 が効果的です。
③ 穴あけ加工
電気絶縁部品などで多用される加工です。
紙ベークライトは加工しやすく、布ベークライトはバリが出やすいため、低速で丁寧に穴あけする ことが重要です。
6、他樹脂(熱可塑性樹脂など)との違い
■ 熱硬化性 vs 熱可塑性
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フェノール樹脂(熱硬化性):
一度硬化すると再溶融しない。耐熱性・強度・絶縁性が高い。 -
熱可塑性樹脂(PP・PE・ナイロンなど):
加熱すると再溶融可能で成形しやすく、弾性や柔軟性が高い。
■ 他の熱硬化性樹脂との比較
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エポキシ樹脂: 接着性・電気特性が優れるが、コスト高。
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メラミン樹脂: 表面硬度が高く耐汚染性に優れる。
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フェノール樹脂: コストと性能のバランスが良く、幅広く産業で活躍。
7、フェノール樹脂の代表的な使用例
フェノール樹脂は多数の産業で使用されています。特に以下の用途が代表的です。
■ 自動車部品
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ブレーキピストン
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ギア
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ベアリング
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ヒューズボックス
■ 電気・電子部品
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端子台
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絶縁板
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コイルケース
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プラグ部品
■ 産業機械部品
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プーリー
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摺動部品
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油圧機器部品
■ その他
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調理器具の取手
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文房具
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工作用治具
8、フェノール樹脂のメリット・デメリット
■ メリット
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高い耐熱性
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優れた剛性と寸法安定性
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絶縁性が非常に高い
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耐摩耗性・耐薬品性が良い
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コストバランスが良く大量生産に向く
■ メリット
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再溶融できずリサイクルが難しい
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色には制限がある(多くは黒・茶系)
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衝撃に弱いグレードが一部ある
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成形条件がシビアで管理が必要
9、フェノール樹脂の代表メーカーと主要ブランド
■ 住友ベークライト株式会社
日本で最も有名なフェノール樹脂メーカーであり、世界的にもトップクラスのシェアを持ちます。
同社のフェノール樹脂は以下の特徴を持ちます。
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電気絶縁性に優れ、電子部品で高い信頼性
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車載向け材料として高耐熱グレードを展開
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布ベークライト・紙ベークライトともに豊富なラインナップ
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成形加工性に優れ、射出成形用グレードも多数
特に「ベークライト」という名称はフェノール樹脂の代名詞として業界で広く認知されています。
■ その他の国内メーカー
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三菱エンジニアリングプラスチックス
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積水化学工業(積層材料)
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タキロンシーアイ(工業用材料)
10、まとめ
木成ゴム株式会社では、フェノール樹脂(布ベークライト・紙ベークライト含む)を使用した、
切削加工・材料選定サポート を行っています。
耐熱性・絶縁性・機械特性が求められる部品の製作から、
最適な材料選び、加工方法の提案まで、ワンストップでお任せいただけます。
「フェノール樹脂を使った部品を作りたい」「布ベークライト・紙ベークライトの違いを相談したい」など、
どんな内容でもお気軽にご相談ください。
豊富な経験と専門知識を持つ技術スタッフが、最適なソリューションをご提案いたします。




