ベークライトとは?材質・特徴・使用例を詳しく解説
ベークライト(Bakelite)は、世界で初めて工業化された合成樹脂として知られ、
現在でも電気部品・機械部品・産業用途など、幅広い分野で使用されている高性能な熱硬化性樹脂です。
耐熱性・機械強度・電気絶縁性に優れ、環境に左右されにくいことから、
樹脂材料の中でも特に“堅牢で信頼性の高い素材”として評価されています。
本記事ではベークライトの材質特性から種類(布ベークライト・紙ベークライト)、加工方法、
使用例、代表メーカーまで、初めての方にも理解しやすいように詳しく解説します。
目次
1、ベークライトとは?
ベークライトは、フェノール樹脂をベースにした熱硬化性樹脂で、
硬化すると熱や薬品に強く、寸法安定性に優れた素材です。
1909年にレオ・ベークランド博士が開発し、名前は発明者の姓に由来します。
熱可塑性樹脂とは異なり、一度硬化すると溶けたり軟化したりしないため、
高温環境でも形状が変わらないことが大きな特徴です。
2、ベークライトの材質構造
ベークライトはフェノール樹脂に補強材(紙・布など)を含浸させて加熱・圧縮成形した材料です。
成形後は三次元的な網目構造を持つため、強度・剛性・耐熱性が非常に高くなります。
■ 基本構成
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フェノール樹脂(母材):熱硬化性で高耐熱
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補強材:紙・布・ガラス繊維など
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添加剤:潤滑剤・着色剤など
構造が緻密で、耐熱・耐油・電気絶縁性など、多くの分野で求められる特性を備えます。
3、ベークライトの主な特徴
ベークライトが産業用途で高く評価される理由は以下の通りです。
● 高い耐熱性
使用温度150℃以上でも形が崩れず、電気・機械用途で活躍します。
● 優れた電気絶縁性
湿度の影響を受けにくく、絶縁材料として古くから採用されています。
● 高剛性・高強度
補強材が入ることで非常に強く、摩耗にも強い。
● 寸法安定性
温度変化・湿度変化に左右されにくく、精密部品にも使われる。
● 耐薬品性
油・アルコール・溶剤などにも比較的強い。
4、ベークライトの種類
ベークライトには複数の種類がありますが、
特に産業用途でよく使われるのが「布ベークライト」と「紙ベークライト」です。
4-1. 布ベークライト(布入りフェノール)
布(綿布)にフェノール樹脂を含浸し、加熱・圧縮して製造する素材です。
● 特徴
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強度が非常に高く、耐衝撃性に優れる
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摩耗に強く、摺動部品として使用可能
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剛性が高く、重荷重にも耐える
● 主な用途
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歯車
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ベアリング部品
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プーリー
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工業機械の摺動部品
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電気端子台
布ベークライトは、力がかかる場所や摩耗が発生する部品に最適です。
4-2. 紙ベークライト(紙入りフェノール)
紙を補強材としたフェノール樹脂積層板で、成形しやすく、軽量で電気絶縁性に優れます。
● 特徴
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軽量で加工性が良い
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絶縁性が高く電気部品で多用
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成形後の寸法精度が高い
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比較的安価で大量生産向き
● 主な用途
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電気スイッチ部品
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コイルボビン
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絶縁板
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ケース類
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家電パーツ
軽くて成形しやすいことから、電気絶縁・筐体部品として広く使用されます。
5、ベークライトの主な加工方法
ベークライトは熱硬化性樹脂のため、溶かして再成形することはできません。
主に次の加工方法が用いられます。
● 圧縮成形
粉末樹脂やシート状材料を金型に入れ、加熱圧縮して成形する。
● 切削加工(旋盤・フライス・マシニング)
積層板を素材として、必要な形状に切削加工する。
布ベークライトは強度があるため切削での厚物加工が多い。
● 打ち抜き加工
薄い紙ベークライト板を金型で打ち抜き、絶縁板などを大量生産。
● 穴あけ・タップ加工
電気部品固定用の穴加工などでよく行われる。
6、ベークライトの使用例
■ 電気・電子部品
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スイッチ部品
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コネクタハウジング
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絶縁プレート
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トランスのボビン
■ 機械・工業部品
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歯車
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ブッシュ
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ガイド部品
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プーリー
■ 日用品
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鍋の取っ手
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アンティーク家電の部材
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装飾品・アクセサリー
ベークライトは外観の質感もよく、アンティーク調のデザイン素材としても人気があります。
7、ベークライトのメリット・デメリット
■ メリット
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高耐熱
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高絶縁性
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高強度・高剛性
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摩耗に強い
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寸法安定性が高い
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表面硬度が高い
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電気・機械どちらにも適用可能
■ デメリット
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一度硬化すると再成形ができない
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荒れた切削面が出やすい(特に布ベークライト)
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衝撃で割れやすい場合がある
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色は基本的に茶系で、デザイン性の自由度は低い
8、代表メーカーとブランド
■ 住友ベークライト株式会社
日本で最も有名なベークライトメーカーであり、世界的にもトップクラスのシェアを持ちます。
同社のベークライトは以下の特徴を持ちます。
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電気絶縁性に優れ、電子部品で高い信頼性
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車載向け材料として高耐熱グレードを展開
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布ベークライト・紙ベークライトともに豊富なラインナップ
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成形加工性に優れ、射出成形用グレードも多数
■ その他の国内メーカー
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三菱エンジニアリングプラスチックス
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積水化学工業(積層材料)
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タキロンシーアイ(工業用材料)
9、ベークライトと他樹脂の比較
● ベークライト vs エポキシ樹脂
ベークライトは剛性・耐熱に優れるが、エポキシは接着性・耐薬品性が高い。
● ベークライト vs 熱可塑性樹脂
熱可塑性樹脂は再溶融が可能で成形しやすいが、耐熱・剛性はベークライトが上。
● ベークライト vs PPS・PEEKなどの高機能樹脂
高機能樹脂は耐熱・耐薬品性に優れるが価格が高い。
ベークライトは“コストを抑えつつ高耐熱を得たい場面”に適している。
10、まとめ
木成ゴム株式会社では、ベークライト(布ベークライト・紙ベークライト)の、
切削加工・旋盤加工、 等に幅広く対応しています。
長年の経験に基づく材料選定から、試作・量産まで一貫してサポートいたします。
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切削加工
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電気絶縁部品の製作
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材料選定の支援
「最適な種類はどれか?」「この条件で使用できるか?」など、設計段階でのご相談も歓迎しています。
ベークライトの加工でお困りの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。




