紙ベークとは?布ベークとの違いも詳しく解説
樹脂材料の中でも、高い電気絶縁性と優れた加工性、そして耐熱性を兼ね備えた“ベークライト積層板”。
その代表格が「紙ベーク」と「布ベーク」です。
どちらもフェノール樹脂をベースにした積層板ですが、用途や性能、質感には明確な違いがあります。
本記事では、紙ベークとはどのような材質なのか、特徴・用途・加工性を詳しく解説しながら、
布ベークとの違いについても分かりやすく整理していきます。
目次
1、紙ベークとは?
紙ベークとは、クラフト紙にフェノール樹脂を含浸させ、熱と圧力を加えて硬化させた積層板のことです。
正式名称は「紙積層フェノール樹脂板」。
古くから電気絶縁部品として使用されており、機械的強度・耐熱性・電気特性のバランスが良く、
価格が比較的リーズナブルであることから、現在でも幅広い産業分野で使用されています。
ベークライトは世界初の熱硬化性樹脂として知られていますが、
その派生として用途別に開発されてきたのが紙ベーク・布ベーク・ガラスエポキシなどの積層板シリーズです。
その中でも紙ベークは「コスト・電気特性・加工しやすさ」の三拍子がそろった代表的な素材といえます。
2、紙ベークが作られる仕組み
紙ベークは以下のステップで製造されています。
①紙へフェノール樹脂を含浸
クラフト紙にフェノール樹脂溶液をしみ込ませ、樹脂を紙の繊維全体に浸透させます。
これにより、紙全体が強化される“基材”となります。
②半硬化(Bステージ化)
含浸された紙を乾燥し、樹脂を半硬化状態にします。触れるとまだ柔らかく加工も可能な段階です。
③積層
半硬化紙を何層も重ね、板厚に応じて積層枚数を決定します。
④熱と圧力による硬化
プレス機にて高温・高圧をかけ、フェノール樹脂を完全に硬化させます。
この工程で紙ベークは強固な一枚板となり、優れた耐熱性・絶縁性・機械特性を持つ素材へと変化します。
3、紙ベークの特徴
紙ベークには多くの優れた特長があります。
● ①電気絶縁性に優れる
フェノール樹脂の特性により、高い絶縁抵抗を持ち、電気用途に最適です。
配電盤、スイッチ、電子機器の絶縁材として古くから使用されてきました。
● ②加工がしやすい
紙をベースとしているため切削性が良く、切断・穴あけ・タップ加工など、非常に扱いやすい素材です。
樹脂の中でも加工コストを抑えやすい点が評価されています。
● ③比較的安価
積層板の中で最もコストが低く、量産品や試作にも適しています。
● ④耐熱性・耐薬品性が高い
フェノール樹脂特有の熱硬化構造により、熱や薬品に対して比較的強い性質があります。
● ⑤機械的強度は布ベークより低め
紙を基材としているため、引張強度や衝撃強度では布ベークに劣ります。
この点が分類や用途選びの大きなポイントとなります。
4、紙ベークの主な用途
紙ベークは、以下のような分野で幅広く利用されています。
①電気絶縁材
・配電盤の絶縁スペーサー
・変圧器の絶縁部品
・スイッチ、端子台の絶縁パーツ
②機械部品
・軽荷重のギア
・絶縁プレート
・カバー・固定板
③試作材料
加工性が高くコストも低いため、試作の検討段階で使われることも多い素材です。
5、紙ベークの加工性
紙ベークは、熱硬化性樹脂の中でも特に加工しやすい素材です。
● 切断
比較的割れにくく、バンドソー・丸鋸で安定して切断できます。
● 旋盤加工
薄肉加工や段付き加工なども可能です。
● フライス加工
平面出し・角加工・溝加工などの精密加工に向いています。
● 穴あけ・タップ
樹脂の中では切粉が出やすく、穴あけ時の精度も安定しています。
金属ほどの強度はないものの、製品形状の自由度が高く、多くの加工現場で重宝されています。
6、布ベークとは
布ベークとは、綿布にフェノール樹脂を含浸させ、積層したフェノール樹脂積層板を指します。
紙ベークよりも素材強度が高く、摩耗に強いのが最大の特徴です。
布ベークの特長
・強度が高い
・耐摩耗性に優れる
・高負荷の機械部品に使用される
・紙ベークより価格は高い
機械的性能が求められるギア、プーリー、軸受け代替部品などに多く採用されています。
7、紙ベークと布ベークの違い
紙ベークと布ベークには明確な違いがあります。
● ①基材
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紙ベーク:クラフト紙
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布ベーク:綿布(布)
● ②機械強度
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紙ベーク:中程度
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布ベーク:高い(衝撃・摩耗に強い)
● ③用途
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紙ベーク:電気絶縁材・軽荷重部品
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布ベーク:ギア・プーリーなど高負荷部品
● ④価格
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紙ベーク:安価
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布ベーク:中価格帯
● ⑤質感・見た目
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紙ベーク:均質で滑らかな茶色系
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布ベーク:積層された布の模様が見え、質感がやや粗め
用途に合わせた選定が非常に重要です。
8、紙ベークを選ぶべきケース・布ベークを選ぶべきケース
紙ベークを選ぶべきケース
・コストを抑えたい
・電気絶縁用途が中心
・軽荷重・軽負荷の部品
・試作でまず形状を確認したい
布ベークを選ぶべきケース
・ギアなど摩耗が発生する部品
・強度を重視する部品
・衝撃や振動が多い環境
・高負荷の機械部品
「電気系は紙ベーク、強度系は布ベーク」という使い分けが基本ですが、
実際には設計要件によって細かく素材を変える場合もあります。
9、紙ベークを使用する際の注意点
紙ベークは扱いやすい素材ですが、いくつか注意点があります。
● ①吸湿性がある
紙を基材としているため、湿度の高い環境では吸湿により寸法がわずかに変化する可能性があります。
● ②強度には限界がある
布ベークに比べ耐摩耗性・引張強度は低めのため、高負荷や長時間摩耗が発生する部分には適しません。
● ③熱硬化性のため再溶融できない
一度硬化したフェノール樹脂は再成形できません。設計段階で形状を決める必要があります。
10、まとめ
木成ゴム株式会社では、紙ベーク・布ベークをはじめとする、
各種フェノール樹脂積層板の加工に幅広く対応しております。
材質選定のご相談から図面検討、試作、小ロット加工、大量ロット製造まで一貫してサポート可能です。
「紙ベークと布ベークのどちらを選べば良いのか」「用途に合った材質が分からない」といったお悩みも、
経験豊富な技術スタッフが丁寧にご案内いたします。
樹脂加工品をご検討中の方は、ぜひお気軽に木成ゴム株式会社へお問い合わせください。




