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PBT樹脂とは?材質・特徴・使用例を詳しく解説

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PBT樹脂とは?材質・特徴・使用例を詳しく解説

PBT樹脂(ポリブチレンテレフタレート)は、自動車部品や電気・電子部品に幅広く使用されている、
エンジニアリングプラスチックのひとつです。

機械的強度や耐熱性、耐薬品性に優れており、さらに成形性の良さから量産品にも多用されています。

本記事では、PBT樹脂の材質的特徴から使用例まで、分かりやすく解説します。
PBT樹脂を検討中の方や、基礎知識を整理したい方に役立つ内容です。






  

1、PBT樹脂とは?

PBT樹脂(Polybutylene Terephthalate)は、ポリエステル系樹脂の一種で、
熱可塑性のエンジニアリングプラスチックとして分類されます。
結晶性樹脂のため、成形後に高い寸法安定性を示し、耐熱性や電気特性にも優れていることから、
モーター部品や電装製品に多用されています。

見た目は白色〜乳白色の樹脂ですが、用途によってガラス繊維(GF)が添加され、
強度や剛性が大幅にアップしたグレードも存在します。

量産向きで、射出成形との相性が特に良いこともPBTが普及している理由です。



2、PBT樹脂の原材料と化学的特徴

 

PBTは、テレフタル酸(TPA)またはジメチルテレフタレート(DMT)と1,4-ブタンジオール(BDO)を、
重縮合させて作られます。この化学構造が、以下のような性質をもたらしています。

  • 高い結晶化速度:短い成形サイクルが可能

  • ポリエステル特有の耐熱性:高温環境でも安定

  • 耐薬品性の高さ:油・グリース・多くの化学薬品に耐性

  • 絶縁特性の良さ:電気・電子部品で採用される理由

このように、化学構造が実用性を形作っている樹脂といえます。



3、PBT樹脂が持つ主な特性

 

PBTが産業で評価されている理由を、特徴ごとに整理します。


■ 優れた寸法安定性

結晶性が高く、吸水率が非常に低いため、成形後の寸法変化が小さい素材です。
特にナイロンと比較すると吸水による膨張がほとんどなく、精密部品にも適します。


■ 高い耐熱性

連続使用温度は100〜140℃程度とされ、エンジン周辺部品や電装部品に安心して利用できます。


■ 高い耐薬品性

油、グリース、燃料、冷却液、洗剤などに対して安定した性質を持ち、
化学薬品が近接する環境でも劣化しにくい素材です。


■ 優れた電気特性

高い絶縁性を持つため、コネクタ、スイッチ、ブレーカーなどの電気部品に数多く使用されています。


■ 成形性の良さ

溶融粘度が安定しており、金型への流動性も良いことから、複雑形状の成形や薄肉化も比較的容易です。

 

 

4、他のエンプラ(PET・POM・ナイロン等)との比較

 

PBTは他のエンジニアリングプラスチックと混同されることが多いため、特徴の違いを文章で比較します。


■ PET樹脂との比較
  • PETは透明性が高いが、結晶化に時間がかかる

  • PBTは透明性はないが結晶化が速く、成形サイクルが短い
    量産成形に強いのはPBT


■ POM樹脂との比較
  • POMは摩擦・摺動性に優れる

  • PBTは耐薬品性や耐熱性で優位
    耐薬品性や環境安定性が必要な用途はPBT


■ ナイロン(PA)との比較
  • ナイロンは吸水しやすく寸法変化が生じやすい

  • PBTは吸水による変形がほとんどない
    精密部品ではPBTが有利

 

 

5、PBT樹脂の種類(GF強化タイプ・難燃タイプなど)

 

PBTには、用途に応じたさまざまなグレードが存在します。代表的なものは以下です。


■ GF(ガラス繊維)強化タイプ

ガラス繊維を10〜30%などの割合で添加したもので、強度・剛性・耐熱性が大幅に向上します。
自動車や電装部品で多用。


■ 難燃グレード

UL94 V0などの難燃規格に対応したグレード。電気・電子分野での安全性確保に必須。


■ 摺動グレード

潤滑剤を添加して摩擦係数を下げたグレード。ギア・摺動部品などに採用。


■ 高流動タイプ

複雑形状の薄肉製品などに適したグレード。金型の細部まで流れやすく成形性が良い。


 

6、PBT樹脂の代表メーカー・ブランド 


国内には、PBT樹脂を製造・供給しているメーカーが複数あり、それぞれが多様なグレードを展開しています。
ここでは、国内でよく知られている代表的なメーカーとブランドを紹介します。

 

■ 東レ

ポリエステル系樹脂に強みを持つ大手化学メーカーで、PBT樹脂も多用途向けに展開しています。
電装用コネクタ、モーター部品、家庭用電気製品向けなど、幅広い用途に対応したグレードが特徴です。


■ 三菱エンジニアリングプラスチックス

エンプラ総合メーカーとして、PBTを含む様々なエンジニアリングプラスチックを展開。
自動車や産業機器向けに、耐熱性・強度・電気特性などを最適化したグレードが用意されています。


■ ポリプラスチックス

エンプラ分野で国内トップクラスの実績を持つメーカーで、PBT樹脂も複数のグレードを提供しています。
高流動タイプや難燃タイプなど、高精度成形を意識したラインナップが充実しています。


■ 住友化学

住友化学グループでは、産業用途に向けたポリエステル系樹脂の展開を行っており、
PBT樹脂も電気・電子部品や自動車部品向けに使用されています。品質安定性に配慮した素材開発が特徴です。


 

7、PBT樹脂のメリット

 

ここでは、産業分野で評価されている利点を整理します。

  • 寸法安定性が高く、精密部品に適している

  • 耐熱性・耐薬品性が高く、過酷な環境にも適用可能

  • 電気絶縁性が高く、電装関連で安心して使用できる

  • 成形性が良く、量産に適している

  • ガラス繊維強化により用途が幅広い

これらのメリットにより、自動車、電装、産業機器などで広く採用されています。



8、PBT樹脂の注意点・デメリット

 

メリットが多いPBTですが、注意点も存在します。


■ 耐加水分解性には注意

高温・高湿度環境では加水分解が進むことがあります。


■ 屋外耐候性は得意ではない

紫外線による劣化が起こりやすいため、屋外用途では改質が必要。


■ 薄肉成形では反りが出ることも

結晶化の速さが影響し、成形条件の微調整が求められます。

用途に応じて、グレード選定や加工条件を最適化することが重要です。



9、PBT樹脂の主な使用例

 

PBTは、電気特性と耐熱性を求められる製品で特に多く使用されています。


■ 自動車部品
  • センサーケース

  • コネクタ

  • モーター周辺部品

  • ランプハウジング


■ 電気・電子部品
  • スイッチ

  • ブレーカー

  • 端子台

  • 電子基板周辺パーツ


■ 産業機器
  • ギア

  • コンベア部品

  • ポンプ周辺部品

用途は多岐にわたり、量産品で幅広く使われている樹脂です。

 

 

10、まとめ

 

PBT樹脂は、寸法安定性・耐熱性・耐薬品性・電気特性など、
産業用途に求められる要素をバランス良く持つエンジニアリングプラスチックです。
自動車、電装、産業機器といった幅広い分野で採用される理由がよく分かります。

木成ゴム株式会社では、樹脂材料の選定や、加工方法の検討についてご相談を承っております。
材料選定段階のご相談や、他材料との比較検討のお手伝いなど、可能な範囲でサポートいたします。

樹脂部品の選定にお悩みの際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

 





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