射出成形機の歴史

本記事では射出成形機の歴史についてご紹介いたします。
ご参考になれば幸いです。
1、射出成形機の誕生
射出成形機は、溶融金属の成形であるダイカスト技術から出発しています。
1869年の米Hyatt兄弟によるセルロイドの発明に端を発した可塑物材料が、
成形に適した材料へ改良されるのに合わせて発展し、
1920年代に、独Eckert社がダイカスト成形の技術を応用して開発した成形機が、
今日の成形機の原型となったといわれています。
1930年に入ってポリスチレンを始めとしてプラスチックの開発が相次ぎ、
独の工作機械メーカーのFranz Braun 社が純機械駆動式横形自動成形機<ISOMA>を、
米でLeominister Tool社がEckert形の全油圧駆動式横形自動成形機を発表して、
本格的な射出成形機の開発が始まったといえます。
日本では、戦前は数台の成形機が独、米から輸入されただけでしたが、
国産の成形機は、1947年に名機製作所が<ISOMA>モデルを発表し、
1950年に松田製作所が堅型成形機を完成させたのが、国産射出成形機の先駆けとなりました。
2、制御装置の歴史
射出成形機の歴史の中で、制御装置の開発と発展は大きな部分を占める要素です。
これには、プロセス制御機能の高機能化と、
電気・電子機器の開発に応じて展開された制御装置自体の小型化、高機能化の2つが含まれます。
射出成形機のプロセスコントロールは、1964年にNew Britain社が、
それまで、押出ブロー成形で行われていたバリソン肉厚のプログラム制御を、
射出速度の制御に応用したものが最初といえます。
次いで、当時工作機械などの制御に使用され始めていたプロセス制御用ミニコンを使用したコンピュータ制御を、
1968年に米国でFellows Gear Shaper社が、1970年には日本で東芝機械が、それぞれ発表し、
制御装置の開発が本格的に展開されていきました。
しかし、コンピュータが十分小型化されておらず高価であった上に、
そもそも射出成形が、溶融させた粘弾性体である成形樹脂を、金型内に充填させた後冷却させるというプロセスが障害となりました。
つまり、当時コンピュータが主として利用されていた状態を一定に保つ制御や、
そのまま適用するだけでは十分ではなかったのです。
また、粘弾性体である溶融体の流動特性や、樹脂の溶融と固化の物理変化に伴う挙動の解体が不十分で、
成形プロセスが実用的なものになりませんでした。
しかし、コンピュータによる制御から得られたノウハウを基に、
射出成形機のプロセス制御に必要な要素の開発を進める契機が生まれました。
プロセス制御システムとしては、
当時すでに開発が進められていた射出速度にプロファイルを与えて変化させるプログラム制御が、
従来の成形法に対して成形品質を改良する効果が大きいことが確認され、実用化されていきました。
制御装置自体の開発は、当初のリレーによるシーケンス制御が、
ミニチュアリレー、ICロジック、シーケンサ、マイクロプロセッサと無接点化などを指向して開発が進められました。
これらの機器構成は、もともと工作機械のNC設置に類似するものでした。
射出中の樹脂の冷却を最小限に抑え、充填完了時の停止精度を上げる高応答の加減速制御など、
その使用条件は当時の工作機械とは大きく異なっていました。
すなわち、高速度・高加速度・重負荷対応、動作信号の遅れを最小かつサイクルごとの変動も最小化する必要性への対応など、
機器に要求される機能はかなり異なっており、射出成形専用に新たに開発する必要があったのです。
プロセス制御は、大きい流れとしては以下の4ステップで発展していきました;
①射出速度と射出圧力のプロファイル制御
↓
②可塑化する溶融樹脂粘度を均一化させ、計量の停止精度を高めるスクリュー背圧と回転数のプロファイル制御
↓
③型開閉時を製品の取出を含めて短縮化させる型開閉動作のプログラム制御
↓
④射出動作と関連させて型締力を変化させ、製品の薄肉化と寸法精度向上を図る型締圧力のプロファイル制御
さらに1990年代当時の最新コントローラには、モニタリング機能の充実と、診断機能の付加により、
品質制御と故障診断の自動化が指向されていました。
3、省エネ追及の歴史
射出成形機は消費電力が大きく、
1973年のオイルショックの影響を最も大きく受けた機械といっても過言ではありません。
速度や圧力の制御は、ポンプから供給される作動油を流量制御弁、圧力制御弁で制御しますが、
当初の射出成形機は、油圧ポンプから供給される油量と圧力が各動作工程で必要とされる値と大きく違う場合、
余剰油が無駄にエネルギーを消費する機械でした。
これを改良するために、負荷圧力に応じて供給圧力が必要最小限となる定差圧力制御弁を選択式にアンロードさせて、
動作に不必要な油量を供給しない制御が可能なポンプを使用させるシステムが開発されました。
さらに、射出成形機が必要な時だけエネルギーを供給できる全電動駆動式が、
"究極の省エネシステム"として評価されています。
いかがだったでしょうか。
今回は射出成形の歴史について記してみました。
技術の確立が進んできた可視化による成形プロセスの解析、
流動解析による成形のシミュレーション、樹脂物性測定等を活用して、
射出成形の制御を展開していくことが期待されてくると思われます。
木成ゴム株式会社では、樹脂の射出成形品を取り扱っております。
金型の製作から成形まで、一貫してご対応させていただいておりますので、
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