ゴムはなぜ伸びる?

本記事ではゴムの基本特性についてご紹介いたします。
ご参考になれば幸いです。
1、ゴムはなぜ伸びる?
力を入れた時にゴムが伸びるのは、
ゴムが「液体状態にある」からです。
こちらを詳しく解説していきたいと思います。
2、ゴムとは?
物体は加えられた力の方向に対して、伸びたり縮んだり(=変形)しますが、
力を取り除くと元の形に戻る性質があります。
この性質を「弾性変形」といいます。
多くの物質が示す弾性変形は、変形量の上限が数パーセント程度です。
しかし、ゴムの弾性変形限界は数百パーセントにも及びます。
また、その変形に必要な力も比較的小さくて済みます。
つまりゴムは柔らかくて弾性に富んだ材料のことをいうのです。
3、ゴムとばねの伸びの違い
ゴムだけでなく、ばねも伸び縮みをしますよね。
しかし、実はゴムとばねでは、変形の機構がまったく異なります。
ゴムは材質が伸びることで全体が伸びますが、
ばねの材質である金属はほとんど伸びませんがばね全体が伸びています。
一般的な金属ばねをイメージしてください。
この金属ばねの両端をつかんで引っ張るように力を加えるとよく伸び、
力を除くとと元の長さに戻りますよね(弾性変形)。
金属ばねの変形というのは、
ばねのピッチ間でのせん断変形によりピッチ間距離が広がり、
ばね全体としての伸びが認められるものであり、
ばねを作っている金属の伸びそのものが、ばね全体の伸びに与える影響は少ないのです。
これに対し、ゴムはどうでしょうか。
ゴムはどの方向に力を加えても、力の方向と同じ方向によく伸びます。
また、同じ太さ、同じ長さの金属線とゴム糸に同じ力を加えた場合、
金属線の伸びは目では確認できませんが、ゴム糸の伸びは簡単に確認できます。
4、ゴムと高分子物質の関係
天然ゴムの主成分は、イソプレンという物質が数千個以上も繋がった細長いひも状物質です。
このように化学構造が同じ物質(=モノマー)が多数、
化学的に結合してできた物質を高分子化合物(=ポリマー)といいます。
モノマーどうしの結合様式により様々な形をしたひもから成る高分子化合物がありますが、
中でもとりわけ、細長いひもの形をした高分子化合物を鎖状高分子といい、
そのひもを高分子鎖(分子鎖)と呼びます。
分子鎖の長さは一般に数マイクロメートルであり、
分子鎖の運動が激しいときは、分子鎖の形が糸まり状(=ランダムコイル)になっています。
また、分子鎖は一本一本が独立しているのではなく、お互いに絡み合った状態にあります。
5、ゴムの「液体状態」とは?
ゴムの伸び縮みの程度(=分子鎖の運動性)はその化学構造と温度に依存します。
温度低下に伴い運動性が低下しますが、その際に分子鎖の形が、
ランダムコイルから三次元的に規則性のある分子鎖配列を有する構造に変化する場合があります。
これが結晶化であり、結晶化ができるかどうかは、
高分子鎖の化学構造と分子鎖の運動性を低下させる条件に依存します。
分子鎖の運動性が高い状態を「液体状態」、
運動性が低い状態を「固体状態」と呼びます。
6、ゴムの伸縮
ゴムとしての特性を高分子物質が示すのは、分子差の運動性が高い液体状態に限ります。
この液体状態にあるランダムコイル鎖は活発な運動をしているので、
コイルの形は刻々と小さく変化しています。
これはつまり、ランダムコイル鎖は容易に曲がったり伸びたりできる、ということです。
したがって、ランダムコイル鎖に力を加えると力の方向に伸びた状態になります。
ゴムは自分の力で伸張変形はできませんが、外力によって伸張変形した分子鎖は、
外力を除くと自発的にもとのランダムコイル状態に戻ります。
「外力によって変形したランダムコイル鎖の形が、
外力を除くことによってもとの形にもどってゆく」
これがゴムの伸縮というわけです。
7、なぜ伸びたゴムは縮む(=ランダムコイル状態に戻る)のか?
エントロピーとは、状態の乱雑さを表現する物理量のことです。
自然界で自発的に起こる変化は、エントロピー値が大きくなる方向への変化であり、
自然界ではエントロピーの高い状態が安定とされています。
ランダムコイルの状態は、"エントロピーの高い状態"であり、
ランダムコイルがゆがんだ状態は、"エントロピーが低い状態"です。
つまり伸びたゴムは、エントロピーが高いランダムコイルの状態に
戻ろうとして縮む、ということになります。
変形したランダムコイルが元の状態に回復するために要する時間は、
高分子物質の化学構造に依存します。
回復時間の違いは、ゴムの物性に大きな影響を及ぼすので、
このことを利用してゴム材料の有効利用が考えられている、というわけです。
いかがだったでしょうか。
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