PA66の耐薬品性は?他材質との違いも詳しく解説
PA66(ポリアミド66、ナイロン66)樹脂は、高い機械的強度や耐摩耗性、耐熱性を兼ね備えたエンプラとして、
自動車部品や産業機械部品、電気・電子部品など幅広い分野で採用されています。
一方で、薬品が使用される環境では、耐薬品性も重要な選定ポイントになります。
PA66樹脂は油類や燃料などには比較的強い一方で、酸や一部の薬品には弱いという特徴があります。
また、吸水性があるため、水分による寸法変化や物性変化も考慮しなければなりません。
本記事では、PA66樹脂の耐薬品性について一般的な特性を解説するとともに、
どのような薬品に強く、どのような薬品に弱いのかを具体的に紹介します。
また、POM・PP・PE・PTFE・PBTなど代表的な樹脂との違いについても詳しく解説します。
目次
1、PA66樹脂とは
PA66樹脂は、ポリアミド樹脂の一種であり、「ナイロン66」とも呼ばれています。
PA6と並ぶ代表的なナイロン材料で、優れた耐摩耗性、高い強度、剛性、耐疲労性を持つことから、
金属代替材料としても数多く使用されています。
また、耐熱性はPA6よりやや高く、機械部品や摺動部品、ギア、ベアリング、コネクタなど、
高い機械的性能が求められる用途で広く採用されています。
ただし、PA66は吸水性を持つため、水分を吸収すると寸法や機械的特性が変化する点が、
他のエンジニアリングプラスチックとは異なる特徴です。
2、PA66樹脂の耐薬品性の特徴
PA66樹脂は、油類や燃料、多くの有機溶剤に対して比較的優れた耐薬品性を示します。
例えば、潤滑油、エンジンオイル、グリース、軽油、ガソリンなどに対しては比較的安定しており、
自動車関連部品にも多く採用されています。
一方で、強酸には弱く、酸性環境では加水分解や分子鎖の切断が起こり、
強度低下や劣化につながる場合があります。
また、強アルカリについても長期間接触すると劣化することがあり、
薬品の種類だけでなく濃度や温度も十分に考慮する必要があります。
3、PA66樹脂が比較的強い薬品
PA66樹脂は、以下のような薬品には比較的良好な耐性を示します。
エンジンオイル、作動油、潤滑油、グリースなどの鉱物油には強く、
長期間接触する用途にも多く使用されています。
ガソリンや軽油などの燃料にも比較的安定しており、自動車の燃料系部品にも採用されています。
脂肪族炭化水素(ヘキサンなど)にも比較的耐性があります。
アルコール類では、エタノールやメタノール、イソプロピルアルコールなどに対しては比較的良好な耐性を示します。
また、中性洗剤や希薄な無機塩水溶液、水などにも比較的安定しています。
4、PA66樹脂が弱い薬品
PA66樹脂が最も注意すべきなのは酸性薬品です。
塩酸、硫酸、硝酸などの無機強酸では、濃度が低くても劣化が進行する可能性があります。
ギ酸やフェノールなどもPA66を侵しやすい薬品として知られています。
また、濃度の高い有機酸や酸化性薬品でも劣化することがあります。
アルカリについては、希薄なアルカリでは比較的安定していますが、
高濃度の水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、高温環境では加水分解や表面劣化が進行する可能性があります。
さらに、次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤も長期間の使用には注意が必要です。
5、薬品によるPA66樹脂の劣化現象
PA66樹脂は薬品との接触により、さまざまな劣化が発生します。
酸による代表的な劣化は加水分解です。
分子鎖が切断されることで機械的強度が低下し、割れや破損が起こりやすくなります。
また、吸水によって寸法が膨張したり、剛性が低下したりすることがあります。
薬品によっては変色や表面の荒れが発生し、外観品質に影響を与える場合もあります。
このような劣化は短時間では目立たなくても、長期間の使用で徐々に進行することがあります。
6、温度や濃度による耐薬品性の違い
PA66樹脂は温度が高くなるほど耐薬品性が低下する傾向があります。
例えば、常温では問題なく使用できる薬品でも、80℃以上では薬品の浸透や化学反応が進みやすくなり、
劣化速度が大きくなることがあります。
また、薬品濃度が高いほど影響を受けやすく、
希薄な酸では問題がなくても濃酸では急速に強度低下が起こる場合があります。
薬液への浸漬だけでなく、高温多湿環境や薬品蒸気への暴露についても考慮することが重要です。
7、他の樹脂との耐薬品性の違い
PA66樹脂は耐薬品性に優れたエンジニアリングプラスチックの一つですが、
薬品の種類によっては他の樹脂の方が適している場合があります。
POM(ポリアセタール)は、PA66と同様に機械部品へ多く採用される材料です。
油類や燃料への耐性は非常に優れていますが、強酸には弱いという共通点があります。
一方で、POMは吸水率が非常に低く、湿度変化による寸法変化が少ないため、
高い寸法精度が求められる用途ではPOMが選ばれることも少なくありません。
PP(ポリプロピレン)は、PA66よりも酸・アルカリに対する耐性が高く、
薬液タンクや薬品配管にも広く使用されています。
ただし、耐熱性や機械的強度、耐摩耗性ではPA66の方が優れているため、
機械部品ではPA66が採用されるケースが多くあります。
PE(ポリエチレン)もPPと同様に優れた耐薬品性を持ち、酸・アルカリ・塩類には非常に強い材料です。
しかし、剛性や耐熱性ではPA66に及ばず、高荷重がかかる用途には適さない場合があります。
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)は、ほぼすべての酸・アルカリ・有機溶剤に対して非常に高い耐性を持ち、
耐薬品性ではPA66を大きく上回ります。
その一方で、材料価格が高く、機械的強度やクリープ特性も異なるため、用途に応じた使い分けが必要です。
PBT(ポリブチレンテレフタレート)は吸水率が低く、寸法安定性に優れるエンジニアリングプラスチックです。
薬品への耐性も比較的良好で、電気・電子部品やコネクタに多く使用されています。
ただし、アルカリ環境では加水分解を受ける場合があります。
ABS樹脂やPC樹脂は有機溶剤に弱く、アルコールやケトン類によって応力割れが発生することがあります。
PA66はこれらの樹脂より油類や燃料への耐性が高く、自動車関連部品などで優位性があります。
このように、PA66樹脂は耐薬品性だけでなく、耐熱性や耐摩耗性、機械的強度とのバランスに優れた材料です。
一方で、酸性環境や高温多湿環境ではPPやPE、PTFEなどの方が適している場合もあるため、
使用条件に応じた材料選定が重要になります。
8、PA66樹脂が使用される代表的な用途
PA66樹脂は、その優れた機械的特性を活かし、自動車部品、ギア、ベアリング、ローラー、
摺動部品、コネクタ、ケーブルクランプ、機械カバー、産業機械部品などに幅広く使用されています。
特に、自動車のエンジンルーム内では油類や燃料への耐性が求められるため、PA66が多く採用されています。
9、PA66樹脂を選定する際の注意点
PA66樹脂を選定する際は、使用する薬品だけでなく、
薬品の濃度、温度、接触時間、荷重条件、吸水環境を総合的に考慮することが重要です。
また、同じPA66でもガラス繊維入りや耐熱グレードなど、
種類によって物性や耐薬品性が若干異なる場合があります。
カタログに掲載されている耐薬品性は一般的な目安であるため、
実際の使用条件に近い環境で評価試験を行うことが望ましいでしょう。
10、まとめ






