POM樹脂「ホモポリマー」と「コポリマー」の違いを解説
POM(ポリアセタール)樹脂は、優れた機械的強度、
耐摩耗性、摺動性、寸法安定性を持つエンジニアリングプラスチックです。
ギア、ブッシュ、軸受、ローラー、カム、スライド部品など、
金属部品の代替材料として幅広く使用されています。
POM樹脂には、大きく分けて「ホモポリマー」と「コポリマー」の2種類があります。
どちらもPOMとして基本的な特性を備えていますが、分子構造が異なるため、
機械的強度、耐熱性、熱安定性、耐薬品性などに違いがあります。
そのため、POM製品を選定する際には、「POMならどれでも同じ」と考えるのではなく、
ホモポリマーとコポリマーそれぞれの特徴を理解し、必要な性能に合わせて選ぶことが重要です。
本記事では、POMのホモポリマーとコポリマーの基本的な違いから、
それぞれのメリット・デメリット、耐薬品性や耐熱性の違い、用途の違いまで詳しく解説します。
目次
1、POM樹脂とは
POMは「ポリアセタール(Polyacetal)」の略称で、代表的なエンジニアリングプラスチックの一つです。
POMの特徴として、まず挙げられるのが優れた機械的強度と剛性です。
さらに、摩擦係数が比較的小さく、耐摩耗性にも優れているため、繰り返し摺動する部品に適しています。
また、吸水率が比較的小さく、寸法安定性にも優れていることから、精密な機械部品にも使用されています。
代表的な用途として、ギア、軸受、ブッシュ、ローラー、カム、
スライド部品、チェーンガイド、搬送設備部品などが挙げられます。
POMにはホモポリマーとコポリマーがあり、同じPOMでもそれぞれ特性に違いがあります。
2、POMのホモポリマーとコポリマーとは
POMのホモポリマーとコポリマーの違いを理解するには、
まず「重合」という言葉を知っておく必要があります。
POMは、ホルムアルデヒドを基本とする成分から作られる樹脂です。
ホモポリマーは、基本的に1種類のモノマーを主体として重合したポリマーを指します。
POMの場合、ホルムアルデヒド由来の構造が連続した、比較的規則性の高い分子構造を持っています。
一方、コポリマーは、2種類以上のモノマーを共重合したポリマーです。
POMのコポリマーでは、ホルムアルデヒド由来の成分にコモノマー(共重合成分)を加えることで、
分子構造の一部を変化させています。
この分子構造の違いが、ホモポリマーとコポリマーの物性の違いにつながっています。
一般的には、ホモポリマーは高い剛性や機械的強度を得やすく、
コポリマーは熱安定性や耐薬品性などのバランスに優れる傾向があります。
ただし、実際の物性はメーカーやグレードによって異なるため、
「ホモポリマーなら必ずこの数値」「コポリマーなら必ずこの性能」と一律に判断することはできません。
3、ホモポリマーの特徴
POMホモポリマーの代表的な特徴は、機械的強度と剛性に優れることです。
例えば、三菱ケミカルアドバンストマテリアルズが展開する「Acetron™ / Ertacetal™ H POM-H」は、
ホモポリマーアセタールの代表的な加工材料です。
同社によれば、コポリマーと比較して優れた機械的強度、剛性、
硬度、耐クリープ性などを特徴としています。
このため、ギア、ブッシュ、軸受、バルブ部品など、
高い機械的特性が求められる用途で使用されています。
特に「荷重がかかる」「変形をできるだけ抑えたい」
「長期間使用してもクリープを抑えたい」といった条件では、ホモポリマーが有力な候補になります。
ただし、酸や熱による分解については、一般的にコポリマーの方が安定しています。
4、コポリマーの特徴
POMコポリマーは、ホモポリマーと比較して熱安定性や耐薬品性に優れる傾向があります。
代表的な製品として、ポリプラスチックスのDURACON® POM「M90-44」があります。
M90-44は同社の代表的な標準グレードで、POMコポリマーとして幅広い用途に使用されています。
また、三菱ケミカルアドバンストマテリアルズでは、
「Acetron™ GP / Ertacetal™ C POM-C」が汎用コポリマーアセタールとして展開されています。
無孔性、低吸湿性、優れた機械加工性などが特徴です。
コポリマーは、ホモポリマーと比較して機械的強度が若干劣る場合がありますが、
熱・薬品に対する安定性とのバランスに優れています。
そのため、一般的な機械部品から、薬品や水分が存在する環境まで、幅広い用途で使用されています。
5、ホモポリマーとコポリマーの機械的特性の違い
ホモポリマーとコポリマーの違いを理解するうえで、特に重要なのが機械的特性です。
一般的に、ホモポリマーはコポリマーと比較して、
硬度、剛性、引張強度、圧縮強度、耐クリープ性などで有利な傾向があります。
例えば、三菱ケミカルアドバンストマテリアルズでは、
POM-HはPOM-Cと比較して、硬度、剛性、引張強度、圧縮強度が約15%優れ、
クリープを示すまでの耐荷重性も約10%高いと説明しています。
したがって、「機械的特性を優先したい」という要求であれば、
POM-H、つまりホモポリマーが有力な候補になります。
一方、コポリマーは機械的特性で若干不利になる場合があるものの、
熱安定性や耐薬品性などを含めた総合的なバランスに優れています。
なお、強化材や添加剤を含む特殊グレードになると、この関係は単純ではありません。
例えばガラス繊維強化POMなどでは、コポリマーをベースにしていても、
標準ホモポリマーより高い剛性を持つ製品があります。
そのため、最終的には「ホモポリマーかコポリマーか」だけでなく、
具体的なグレードの物性値を確認する必要があります。
6、ホモポリマーとコポリマーの耐熱性・耐薬品性の違い
耐熱性については、「融点」と「熱安定性」を分けて考える必要があります。
一般的なPOM-Hは融点が高く、短時間の高温環境における機械的特性では有利な場合があります。
一方、POM-Cは熱分解や加水分解に対する安定性に優れる傾向があります。
三菱ケミカルアドバンストマテリアルズの一般的な未充填グレードでは、
POM-Cの融点が約165℃、POM-Hが約180℃とされています。
一方、連続使用可能温度はPOM-Cが約100℃、POM-Hが約110℃とされています。
ただし、実際の使用可能温度はグレードや使用条件によって異なるため、
これらの数値をすべてのPOMに当てはめることはできません。
耐薬品性では、コポリマーが有利な傾向があります。
POMは酸によって分子鎖が分解する可能性がありますが、
コポリマーでは分子構造を安定化させることで、酸や熱による分解を抑えています。
油類、ガソリン、軽油、グリースなどに対する基本的な耐性は、
ホモポリマーとコポリマーで大きく変わらない場合があります。
一方、強酸、酸化性薬品、高温の水や蒸気などが関係する場合には、
コポリマーが有利になるケースがあります。
なお、コポリマーであっても強酸に無条件で耐えられるわけではありません。
7、ホモポリマーとコポリマーの代表的なメーカー・グレード
「ホモポリマーPOM」の候補として、まず挙げられるのが、
三菱ケミカルアドバンストマテリアルズの「Acetron™ / Ertacetal™ H POM-H」です。
これはPOM-H、つまりホモポリマーの加工用素材で、ロッドやプレートなどの形状で展開されています。
高い機械的強度、剛性、硬度、耐クリープ性などが特徴です。
したがって、切削加工品などで「ホモポリマーPOMの丸棒や板材が欲しい」というケースでは、
具体的な候補として挙げやすい製品です。
一方、射出成形用のPOM樹脂材料では、ポリプラスチックスのDURACON® POMが代表的なブランドの一つです。
同社には、例えば「H140DR」というグレードがあります。
H140DRはディーゼル燃料に対する耐性を高めた特殊グレードで、
一般的なPOMの機械的特性を維持しながら、燃料や酸性環境への耐性を高めた製品です。
H140DRは、単純に「機械的強度重視の標準ホモポリマー」として選ぶグレードではなく、
燃料・酸性環境など特定の要求に対応した特殊グレードとして考えるのが適切です。
また、ポリプラスチックスには「HP-Xシリーズ」もあり、HP90X、HP25X、HP270Xなどが展開されています。
これらはコポリマーでありながら、従来のコポリマーより強度・剛性を高め、
ホモポリマーに近い機械的特性を狙ったシリーズです。
標準的なコポリマーを探すのであれば、ポリプラスチックスのDURACON® M90-44も代表的な候補です。
M90-44は標準的な中粘度タイプとして位置付けられています。
8、用途によってホモポリマーとコポリマーをどう選ぶか
「どちらが優れているか」ではなく、「どちらの特性が必要か」で判断することが重要です。
例えば、ギアや軸受で高い荷重がかかり、剛性や耐クリープ性を重視する場合はホモポリマーが候補になります。
一方、薬品や高温水、湿熱環境などへの耐性を重視する場合は、コポリマーが候補になりやすくなります。
また、単純な標準グレードではなく、用途に特化したグレードを選択する方法もあります。
例えば燃料環境であれば、ポリプラスチックスのH140DRのように、
燃料・酸性環境への耐性を高めたグレードがあります。
さらに、摺動性を重視する場合には、ホモポリマー・コポリマーという分類だけでなく、
PTFEや特殊添加剤などを配合した摺動グレードを検討する必要があります。
そのため、材料選定では「POM-HかPOM-Cか」を最初の判断材料とし、
その後に「標準グレードか、特殊グレードか」という順番で絞り込むと整理しやすくなります。
9、選定時に確認したいポイント
POMの種類を選ぶ際には、まず以下のような使用条件を整理することが重要です。
どの程度の荷重がかかるのか、摺動するのか、使用温度は何℃程度なのか、
油・燃料・水・薬品に接触するのか、屋外で使用するのかなどを確認します。
例えば、
「機械的強度を最優先したい」
「油に接触する」
「高温環境で使用する」
「酸性薬品に接触する」
「摺動部品として使用する」
といった条件によって、候補となるPOMグレードは変わります。
また、同じPOMでも、射出成形用ペレットと切削加工用のプレート・丸棒では、
メーカーや製品体系が異なります。
そのため、「射出成形用なのか、切削加工用なのか」「必要な形状・寸法は何か」まで確認すると、
適切な材料を選びやすくなります。
特に重要な用途では、メーカーのデータシートだけで判断せず、
実際の使用条件を想定した評価を行うことが望ましいでしょう。
10、まとめ






