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PPS樹脂の耐薬品性は?他材質との違いも詳しく解説

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PPS樹脂の耐薬品性は?他材質との違いも詳しく解説

PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂は、優れた耐熱性、耐薬品性、機械的強度、
剛性、難燃性、寸法安定性を備えたスーパーエンジニアリングプラスチックです。

自動車部品、半導体製造装置、化学機器、ポンプ、電気・電子部品など、
高温や薬品にさらされる環境で幅広く使用されています。

特にPPSの大きな特徴が、酸・アルカリ・有機溶剤・油類などに対する高い耐薬品性です。
一般的なエンジニアリングプラスチックと比較しても優れた耐薬品性を持ち、
東レの資料では、200℃以下でPPSを溶解させる有機溶剤はないとされています。

ただし、「PPSならどのような薬品にも耐えられる」というわけではありません。
薬品の種類や濃度、温度、接触時間などによっては、PPSでも劣化する可能性があります。
また、PPSには未強化品だけでなく、ガラス繊維や無機フィラーを配合したグレードもあり、
具体的な製品によって特性は異なります。

本記事では、PPS樹脂の耐薬品性について、酸・アルカリ・有機溶剤・油類など具体的な薬品ごとに解説します。
さらに、PA66、PBT、POM、PEEK、PTFEなど、他の代表的な樹脂との違いについても詳しく紹介します。

 





 

  

1、PPS樹脂とは

PPSは「Poly Phenylene Sulfide」の略称で、日本語では「ポリフェニレンサルファイド」と呼ばれます。

ベンゼン環と硫黄を主体とする分子構造を持つ、
結晶性のエンジニアリングプラスチックで、融点はおよそ280℃です。

高温環境でも機械的強度や剛性を維持しやすく、
一般的なエンジニアリングプラスチックよりも高い耐熱性を持っています。

また、吸水率が非常に低く、水分による寸法変化が小さいことも特徴です。
さらに、優れた難燃性を持ち、電気・電子部品などでも使用されています。

代表的な用途として、自動車のエンジン周辺部品、燃料系部品、コネクター、センサー部品、
ポンプ部品、半導体製造装置部品、化学設備部品などが挙げられます。

このようにPPSは、一般的な樹脂では使用が難しい高温・薬品環境で使用されることの多い材料です。



2、PPS樹脂の耐薬品性の特徴


PPSの大きな特徴の一つが、非常に優れた耐薬品性です。

PPSは、酸、アルカリ、有機溶剤、油類などに対して高い耐性を示します。
東レのTORELINA™では、酸、アルカリ、有機溶剤などに対して優れた耐薬品性を持ち、
200℃以下でPPSを溶解させる有機溶剤はないとされています。

そのため、薬液を扱う設備や、自動車の燃料・オイルに接触する部品などに適しています。

PPSの耐薬品性が高い理由として、化学的に安定した分子構造と高い結晶性が挙げられます。
薬品が樹脂内部へ侵入しにくく、薬品による分子構造の変化も起こりにくいことから、
多くの薬品に対して優れた耐性を示します。

ただし、耐薬品性は薬品の種類だけでなく、濃度、温度、接触時間、応力状態などにも左右されます。

例えば、常温で短時間接触する場合には問題のない薬品でも、
高温で長期間接触すると劣化する可能性があります。

そのため、PPSを薬品環境で使用する場合は、具体的な使用条件まで確認することが重要です。


 

3、PPS樹脂の酸・アルカリに対する耐性

 

PPSは、一般的な樹脂と比較して酸・アルカリの双方に対して優れた耐性を持っています。

塩酸や硫酸などの無機酸に対しても比較的安定しており、薬液設備などで使用されるケースがあります。

ただし、酸であればすべて問題なく使用できるわけではありません。

特に注意したいのが、硝酸のような強い酸化性を持つ薬品です。
PPSは一般的な酸には強い一方、強い酸化作用を持つ薬品には影響を受ける可能性があります。

また、濃度の高い塩酸や硫酸についても、高温・長時間の連続接触では注意が必要です。

一方、アルカリに対してもPPSは優れた耐性を示します。

例えば、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ水溶液に対して比較的安定しています。
そのため、アルカリ性の薬液を扱う設備部品にも使用されます。

ただし、アルカリについても、高温・高濃度・長時間という条件が重なると影響を受ける可能性があります。

したがって、PPSは「酸にもアルカリにも強い樹脂」と考えることはできますが、
強酸化性薬品や極端な使用条件については個別に確認することが必要です。



4、PPS樹脂の有機溶剤・油類に対しる耐性

 

PPSは、有機溶剤や油類に対しても非常に優れた耐性を持っています。

アルコール類、ケトン類、炭化水素類など、多くの有機溶剤に対して高い耐性を示します。

また、ガソリン、軽油、エンジンオイル、潤滑油、グリースなどの油類・燃料類にも強く、
自動車関連部品で使用される理由の一つとなっています。

特にPPSは、高温環境でも多くの有機溶剤に対して安定している点が大きな特徴です。

一般的なエンプラでは、高温になると薬品による膨潤や強度低下などが問題になる場合がありますが、
PPSはそのような環境でも比較的安定しています。

ただし、長期間の連続接触や高温・高圧環境では、樹脂そのものだけでなく、
添加剤や強化材などの影響も考慮する必要があります。

 

 

5、PPS樹脂の耐薬品性で注意したい薬品

 

PPSは非常に優れた耐薬品性を持っていますが、注意が必要な薬品もあります。

代表的なのが硝酸などの強酸化性薬品です。

また、濃塩酸、濃硫酸などについても、高温で常時接触する環境では物性低下につながる可能性があります。

さらに、アミン類や一部のハロゲン化炭化水素についても、高温条件では注意が必要です。

ここで重要なのが、PPSの「グレード」です。

PPSには、未強化品、ガラス繊維強化品、無機フィラー強化品などがあります。

例えばガラス繊維40%強化PPSは、樹脂そのものの強度・剛性を高められる一方、
強い薬品環境では樹脂とガラス繊維の界面などが影響を受ける可能性があります。

したがって、薬品設備などでPPSを使用する場合には、「PPSだから大丈夫」と判断するのではなく、
薬品の種類、濃度、温度、接触時間と具体的なグレードを組み合わせて検討することが重要です。






 

 

6、PPS樹脂と他の樹脂との耐薬品性の違い

 

PPSの耐薬品性を理解するには、他のエンプラと比較すると特徴が分かりやすくなります。


まずPA66と比較すると、PPSは耐熱性・耐薬品性・低吸水性で有利です。

PA66は機械的強度に優れた材料ですが、水分を吸収しやすく、吸水による寸法変化や物性変化が起こります。
また、強酸や高温の薬品環境では、PPSほどの耐性を期待することは難しくなります。

そのため、通常の機械部品であればPA66、
高温・薬品・低吸水性まで求める場合にはPPSという使い分けが考えられます。


PBTと比較した場合も、PPSは高温環境と薬品環境の両方で有利です。

PBTは電気特性、寸法安定性、耐薬品性などに優れた材料ですが、耐熱性ではPPSが上回ります。
特に高温の薬液やエンジン周辺など、温度と薬品の両方が問題になる環境ではPPSが有力な候補になります。


POMと比較すると、耐薬品性・耐熱性ではPPSが有利なケースが多くなります。

POMは油、燃料、アルカリなどに比較的強く、ギアや軸受などの摺動部品に非常に適した材料です。
しかし、強酸や高温環境には注意が必要です。

一方PPSは、POMよりも高い耐熱性を持ち、酸・アルカリ・有機溶剤などに対しても優れた耐性を示します。


PEEKとの比較では、どちらも非常に高い耐熱性と耐薬品性を持っています。

PEEKは機械的強度、耐熱性、耐摩耗性、耐薬品性など、
総合的に非常に高い性能を持つスーパーエンジニアリングプラスチックです。

一方、PPSはPEEKより材料コストを抑えやすいことが大きなメリットです。
そのため、「PEEKほどの性能が必要なのか、それともPPSで十分なのか」、
といった観点で比較することも重要です。


PTFEなどのフッ素樹脂と比較すると、純粋な耐薬品性ではPTFEがさらに優れています。

PTFEは強酸、強アルカリ、各種有機溶剤などに対して極めて高い耐性を持つため、
薬品そのものへの耐性を最優先する場合には非常に有力です。

一方、PPSはPTFEよりも機械的強度や剛性に優れています。

そのため、「薬品に耐えるだけでなく、高温環境で荷重を受ける機械部品として使用したい」という場合には、
PPSが適するケースがあります。


このように、PPSは耐薬品性だけでなく、
耐熱性、強度、剛性、寸法安定性などを総合的に考えたときにバランスの良い材料です。



 

7、PPS樹脂の代表的メーカー・グレード 

 

PPSには複数のメーカーがあり、用途に応じてさまざまなグレードが展開されています。

代表的なメーカーの一つが東レです。

東レのPPS樹脂「TORELINA™(トレリナ)」には、ガラス繊維強化タイプ、
ガラス繊維・フィラー強化タイプ、未強化タイプなど、さまざまなグレードがあります。

例えば、高い機械的強度や剛性が必要な場合にはガラス繊維強化グレード、
摺動性など特定の性能を重視する場合には用途別の特殊グレードが候補となります。

また、東ソーでは「サスティール® PPS」を展開しています。
一般グレードに加えて特殊グレードもあり、耐熱性、耐薬品性、
寸法安定性などを活かした用途に使用されています。

DICでは「DIC.PPS」を展開しており、
ガラス繊維や無機フィラーなどを配合した各種PPSコンパウンドを提供しています。

切削加工用のPPS素材では、クレハエクストロンも代表的なメーカーの一つです。

同社では、未強化PPSやガラス繊維40%強化PPSなどの加工用素材が展開されており、
化学ポンプ部品、半導体製造装置部品などに使用されています。

このように、実際にPPSを手配する際には、「PPS樹脂」という材料名だけでなく、
射出成形用ペレットなのか、切削加工用の板材・丸棒なのか、
未強化なのかガラス繊維強化なのかまで確認することが重要です。

 



8、PPS樹脂の用途

 

PPSは、高温・薬品・電気特性などが要求されるさまざまな分野で使用されています。

自動車分野では、エンジン周辺部品、燃料系部品、
ポンプ部品、センサー部品、コネクターなどが代表的です。

特に、エンジンルーム内のように高温になる場所では、
一般的な樹脂よりも高い耐熱性を持つPPSが適しています。

化学関連設備では、ポンプ部品、バルブ部品、シール部品などに使用されます。

薬品に接触する環境では、耐薬品性に加えて、薬品による寸法変化が小さいことも重要です。

また、半導体製造装置では、薬液に接触する部品や治具などに使用されます。

電気・電子分野では、コネクター、リレー部品、各種絶縁部品などにも使用されています。

このようにPPSは、「高温」「薬品」「機械的強度」「電気特性」といった、
複数の条件が同時に要求される用途で特に力を発揮する樹脂です。




9、PPS樹脂を選定する際のポイント

 

PPSを選定する際には、まず使用環境を具体的に確認することが重要です。

使用温度は何℃なのか、薬品の種類は何か、濃度はどの程度なのか、
薬品に常時接触するのか、短時間の接触なのか、水や蒸気にさらされるのかなどを確認します。

さらに、機械部品として使用する場合は、
必要な強度、剛性、荷重、摺動の有無なども確認する必要があります。

PPSには未強化品だけでなく、ガラス繊維強化品、無機フィラー強化品など、
摺動性を高めたグレードなどがあります。

例えば、高い機械的強度や剛性が必要ならガラス繊維強化PPS、
寸法安定性や特定の摺動特性が必要なら用途別グレードというように使用目的に合わせて選択します。

また、板材や丸棒などの切削加工品を調達する場合と、射出成形用ペレットを調達する場合では、
候補となるメーカーやグレードが異なります。

したがって、使用環境や必要な物性、加工方法まで整理することで、
適切なグレードを選びやすくなります。

 
 

10、まとめ

 

PPSは、耐熱性、機械的強度、剛性、難燃性、寸法安定性に加えて、
非常に優れた耐薬品性を持つスーパーエンジニアリングプラスチックです。

酸・アルカリに対して高い耐性を示し、ガソリン、軽油、エンジンオイル、
潤滑油、グリースなどの油類・燃料類にも優れた耐性を持っています。
また、多くの有機溶剤に対しても高い耐性を示します。

一方で、硝酸などの強酸化性薬品や、濃塩酸・濃硫酸などの高温・長時間接触では注意が必要です。

木成ゴム株式会社では、各種樹脂・ゴム材料に関するご相談や、
用途に適した材料のご提案、加工品の製作まで幅広く対応しております。
ぜひお気軽にお問い合わせください。

 



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