ガラエポの電気絶縁性は?他材質との違いも詳しく解説
ガラエポとは「ガラスエポキシ」の略称で、
ガラス繊維とエポキシ樹脂を組み合わせた複合材料です。
高い機械的強度や剛性と、優れた電気絶縁性を兼ね備えていることから、
電気・電子機器、産業機械、重電設備などの絶縁部品に幅広く使用されています。
ガラエポの大きな特徴は、単に「電気を通しにくい」だけではありません。
絶縁抵抗、体積抵抗率、表面抵抗、絶縁破壊電圧、誘電率、誘電正接など、
電気絶縁材料として重要な特性を高い水準で備えています。
また、POM、PBT、ナイロン、PET、ユニレート、PTFE、PEEKなど、
電気絶縁性を持つ樹脂材料は数多くあります。
しかし、材料によって得意とする性能は異なります。
そこで本記事では、ガラエポの電気絶縁性について解説するとともに、
他の樹脂材料との違いについても詳しく紹介します。
目次
1、ガラエポとは
ガラエポは、ガラス繊維をエポキシ樹脂で固めた積層材料です。
一般的なガラエポ積層板では、ガラスクロスにエポキシ樹脂を含浸させ、
複数枚を積層して加熱・加圧することで製造されます。
ガラス繊維が機械的な補強材となるため、
エポキシ樹脂単体よりも高い強度や剛性を実現できます。
代表的な用途は、絶縁板、絶縁スペーサー、
絶縁ワッシャー、端子台、各種電気機器部品、治具などです。
また、ガラエポにはG-10、FR-4、G-11など複数の種類があり、
難燃性、耐熱性、機械的強度など、用途に応じたグレードが選択されます。
2、ガラエポの電気絶縁性の特徴
ガラエポの電気絶縁性を評価する際には、
絶縁抵抗、体積抵抗率、表面抵抗、耐電圧、誘電率、誘電正接などを確認します。
例えば、一般的なガラス布・エポキシ樹脂積層板では、
体積抵抗率が常態で10⁸~10¹⁰ MΩ・cm、吸湿処理後でも10⁷~10⁹ MΩ・cmになります。
Ω・cmに換算すると、常態で10¹⁴~10¹⁶ Ω・cmという非常に高い値です。
表面抵抗も常態で10⁷~10⁹ MΩ、吸湿処理後で10⁶~10⁷ MΩとされています。
このように、ガラエポは内部だけでなく、表面についても電気を流しにくい材料です。
3、ガラエポの絶縁抵抗と体積抵抗率
絶縁抵抗とは、材料に電圧を加えたときに電流が流れにくい程度を示す指標です。
一方、体積抵抗率は材料内部の電気の流れにくさを示す値です。
一般的なガラエポでは、体積抵抗率が常態で10⁸~10¹⁰ MΩ・cmあたりです。
つまり、10¹⁴~10¹⁶ Ω・cmという非常に高い抵抗率を示します。
ただし、ガラエポの電気絶縁性は湿度の影響を受けます。
吸湿処理後では、体積抵抗率が10⁷~10⁹ MΩ・cmとなり、
常態と比較して低下することがあります。
そのため、屋外や高湿度環境で使用する場合には、
乾燥状態のカタログ値だけで判断するのではなく、吸湿後の特性も確認することが重要です。
4、ガラエポの表面抵抗と耐電圧性
表面抵抗は、材料の表面に沿って電流が流れにくいかを示す値です。
一般的には、表面抵抗が常態で10⁷~10⁹ MΩ、吸湿処理後で10⁶~10⁷ MΩくらいです。
一方、耐電圧を考える場合には、材料の厚さや試験方法にも注意が必要です。
貫層耐電圧が油中1分間の試験で16 MV/m、貫層破壊電圧が23~33 MV/mとなります。
ただし、こうした数値は試験条件に基づく材料特性であり、
そのまま「実際の製品を何Vまで使用できる」という意味ではありません。
実際の部品では、厚さ、穴、角部、傷、沿面距離、周囲の湿度などによって絶縁性能が変化します。
特に高電圧用途では、材料の耐電圧だけでなく、
実際の部品形状を含めて検討する必要があります。
5、ガラエポの誘電率と誘電正接
高周波用途や電子部品では、絶縁抵抗だけでなく誘電率や誘電正接も重要です。
誘電率は、材料が電界に対してどのように応答するかを示す値です。
誘電正接は、交流電界を加えた際に電気エネルギーが熱として失われる程度を示します。
汎用のガラエポでは、1MHzにおける誘電率が4.0~4.8、誘電正接が0.015~0.019あたりです。
また、水浸せき後では誘電率が4.2~5.0、誘電正接が0.018~0.023となります。
つまり、吸湿によって誘電特性も変化します。
そのため、単純な絶縁用途と高周波回路用途では、
材料選定時に確認すべき項目が異なります。
6、ガラエポの電気絶縁性に影響する起因
ガラエポの電気絶縁性は、温度、湿度、吸水、周波数、材料厚みなどによって変化します。
特に重要なのが湿度です。
一般的なガラス布・エポキシ樹脂積層板では、
常態で体積抵抗率が10⁸~10¹⁰ MΩ・cmなのに対して、
吸湿処理後は10⁷~10⁹ MΩ・cmあたりとなります。
表面抵抗についても、常態の10⁷~10⁹ MΩから吸湿処理後には10⁶~10⁷ MΩへ低下します。
つまり、ガラエポは高い絶縁性を持つものの、
湿気による影響を完全に受けないわけではありません。
また、誘電率についても、水浸せき後には4.0~4.8から4.2~5.0へ変化するデータがあります。
したがって、屋外、高湿度環境、水がかかる環境などで使用する場合には、
乾燥状態のカタログ値だけで判断しないことが重要です。
さらに、高温環境では樹脂の電気特性や機械的特性が変化する可能性があります。
ガラエポのグレードによっては、ガラス転移温度が100℃を大きく超えるものもあります。
ただ、ガラス転移温度や熱分解温度は、そのまま連続使用温度を意味するものではありません。
実際の使用温度については、
メーカーが提示する推奨条件や用途別のデータを確認する必要があります。
7、ガラエポと他の樹脂との電気絶縁性の違い
ガラエポと他の樹脂を比較する場合、電気絶縁性だけでなく、
機械的強度、吸水性、耐熱性、耐薬品性、摺動性なども含めて考えることが重要です。
まずPOMとの比較です。
POMは電気絶縁性を持つエンジニアリングプラスチックで、
ギア、ローラー、軸受、ガイドなどに広く使用されています。
POMは機械加工性や摺動性に優れているため、
機械部品として非常に使いやすい材料です。
一方、ガラエポはガラス繊維によって補強されているため、
板材として高い剛性を確保しやすいことが特徴です。
そのため、絶縁スペーサーや絶縁板など、
電気絶縁性と高い剛性を同時に求める用途ではガラエポが適しています。
PBTとの比較では、PBTは電気・電子部品との相性が良い材料です。
PBTはコネクタ、スイッチ、センサー部品などの射出成形品に多く使用され、
電気絶縁性、耐熱性、機械的強度のバランスに優れています。
一方、ガラエポは板材として供給されるため、
必要な寸法に切断・切削して絶縁部品を製作しやすいというメリットがあります。
そのため、大量生産する複雑形状の部品ではPBT、
板材から製作する絶縁板やスペーサーではガラエポという使い分けが考えられます。
ナイロンとの比較では、吸水性が大きな違いです。
ナイロンは機械的強度や耐摩耗性に優れていますが、
吸水によって寸法や電気特性が変化しやすい材料です。
ガラエポも湿度の影響を受けますが、
ガラス繊維とエポキシ樹脂を組み合わせた積層板として、電気絶縁用途で長く使用されています。
特に寸法安定性と剛性を重視する絶縁部品では、ナイロンよりガラエポが適する場合があります。
ユニレートとの比較も重要です。
ユニレートはPETをベースにガラス短繊維や無機フィラーを複合した板材料です。
ガラエポと同じく、絶縁性、剛性、寸法安定性などを活かした板材用途があります。
ユニレートの特徴は低吸水性と高い寸法安定性です。
一方、ガラエポはガラスクロスとエポキシ樹脂による積層構造を持ち、
電気絶縁材料として非常に広い実績があります。
湿度変化による寸法変化を特に抑えたい場合にはユニレート、
電気絶縁性と高い剛性を重視する一般的な絶縁板用途ではガラエポが候補になります。
PEEKとの比較では、耐熱性と材料コストが大きく異なります。
PEEKはスーパーエンジニアリングプラスチックであり、
高い耐熱性、耐薬品性、機械的強度を持っています。
電気絶縁性にも優れているため、高温環境で使用する絶縁部品ではPEEKが候補になります。
ただし、PEEKは一般的なエンジニアリングプラスチックと比較して材料価格が高いため、
常温から中温域で使用する絶縁板であれば、ガラエポの方がコスト面で有利になるケースがあります。
PTFEとの比較では、電気絶縁性だけでなく機械的性質が大きく異なります。
PTFEは非常に高い電気絶縁性に加えて、優れた耐薬品性と低摩擦性を持っています。
そのため、薬品環境にある絶縁部品や摺動部品ではPTFEが有力です。
一方、PTFEは比較的柔らかく、荷重によるクリープも発生しやすいため、
高い剛性が必要な構造部品には注意が必要です。
ガラエポはPTFEほどの耐薬品性や低摩擦性を持ちませんが、
高い剛性を活かして、荷重を受ける絶縁スペーサーや絶縁板などに使用できます。
このように、電気絶縁性だけで見るとPOM、PBT、ナイロン、
ユニレート、PEEK、PTFEなども候補になります。
しかし、ガラエポは「高い電気絶縁性+高い剛性+寸法安定性」、
という組み合わせを実現しやすい点に大きな特徴があります。
8、ガラエポの代表的なメーカー・製品
ガラエポ積層板は、複数のメーカーから販売されています。
代表例として、
利昌工業では「EL-GEM/G-10」などのガラス布・エポキシ樹脂積層板を展開しています。
例えば「ES-3230J」はG-10系のガラス布エポキシ積層板で、
重電機や遮断器、各種加工品などに使用されています。
また、高耐熱タイプとして「ES-3260(EL-GEH/G-11)」があります。
こちらは絶縁スペーサーや断熱材などに使用され、加熱時の機械的強度に優れる製品です。
日光化成では「ニコライト」シリーズがあり、
ガラスエポキシ積層板として「NL-EG-23N」など、豊富なラインナップがあります。
日光化成のニコライトには、
ガラスエポキシだけでなくシリコーンガラスなど異なる樹脂系の積層板もあるため、
製品名だけで判断せず、材質・グレードを確認することが重要です。
9、ガラエポを選定する際の注意点
ガラエポを電気絶縁用途で使用する際には、まず必要な電圧を確認します。
低電圧の絶縁スペーサーなのか、高電圧機器の絶縁部品なのかによって、必要な性能が変わります。
次に、使用温度と湿度を確認します。
例えば、常温・低湿度環境で使用する場合と、高温・高湿度環境で使用する場合では、
絶縁抵抗や誘電特性が変化する可能性があります。
また、必要に応じて体積抵抗率、表面抵抗、耐電圧、誘電率、誘電正接などのデータを確認します。
特に高周波回路では、絶縁抵抗だけでなく、誘電率や誘電正接が重要になります。
さらに、板厚も重要です。
耐電圧や絶縁破壊について検討する場合、材料の種類だけでなく、
実際に使用する板厚や形状を考慮する必要があります。
ガラエポには多くのメーカー・グレードがあるため、
必要な性能に合ったグレードを選定することが重要です。
10、まとめ






