ポジティブリスト制度(改正食品衛生法)とは?徹底解説
食品に直接触れる樹脂製の部品や容器を扱う場合、
「食品衛生法に適合しているか」という確認が重要になります。
特に近年は、食品製造設備の部品、食品容器、包装材料などに使用する樹脂について、
ポジティブリスト制度への対応を求められるケースが増えています。
ポジティブリスト制度とは、食品用の器具・容器包装に使用できる物質をあらかじめリスト化し、
原則としてリストに収載された物質のみを使用できるようにする制度です。
食品用器具・容器包装については2020年6月1日に制度が施行され、
2025年5月31日で経過措置が終了しました。
現在は、2025年6月1日以降の制度が適用されています。
本記事では、2026年9月時点の最新情報をもとに、ポジティブリスト制度の概要、
対象となる樹脂、確認時の注意点などを詳しく解説します。
目次
1、ポジティブリスト制度とは
ポジティブリスト制度は、食品用の器具・容器包装に使用する合成樹脂について、
安全性が確認された物質のみを使用可能とする制度です。
従来の考え方では、使用を禁止する物質を定める「ネガティブリスト方式」が中心でした。
これに対してポジティブリスト方式では、「使用してよい物質」をあらかじめリストに掲載します。
現在の制度では、食品用器具・容器包装に使用する合成樹脂について、
食品、添加物等の規格基準である厚生省告示第370号の別表第1が基本となります。
別表第1は、第1表の「基材」と第2表の「添加剤」から構成されています。
さらに、基材を構成するモノマー等については別途通知で規定されています。
つまり、「この樹脂は食品衛生法に対応している」というだけではなく、
基材となるポリマーや添加剤などが制度上認められているかを確認する必要があります。
2、改正食品衛生法で何が変わったのか
ポジティブリスト制度は、
2018年に公布された食品衛生法等の一部改正によって導入され、
2020年6月1日に施行されました。
ただし、制度開始直後には一定の経過措置が設けられていました。
この経過措置が2025年5月31日で終了し、
2025年6月1日から現在のポジティブリスト制度が本格的に適用されています。
したがって、2026年9月時点では、
「まだ経過措置期間だから以前の材料を使用できる」という段階ではありません。
食品用の樹脂部品や容器包装を新たに採用する場合には、
現在のポジティブリストへの適合状況を確認することが重要です。
また、2023年11月30日にポジティブリストが再整理され、
2024年9月27日に改正されています。
さらに、基材を構成するモノマー等の通知については、
2026年3月26日に最終改正されています。
3、ポジティブリスト制度の対象となるもの
2025年6月1日時点で、
食品衛生法上のポジティブリスト制度の対象となる政令指定の材質は「合成樹脂」です。
ここでいう合成樹脂には、一般的な熱可塑性樹脂だけでなく、
熱硬化性樹脂や熱可塑性エラストマーも含まれます。
例えば、食品機械や食品容器などに使用されるプラスチック部品では、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエステルなど、
さまざまな樹脂が使用されています。
ただし、単純に「樹脂名がポジティブリストにあるから適合」と判断することはできません。
同じ「POM」や「PA」と呼ばれる樹脂でも、使用するモノマーや添加剤、
使用条件などによって確認すべき事項が変わるためです。
4、ポジティブリストに収載されている代表的な樹脂
ポジティブリストを確認する際には、一般的な樹脂名だけでなく、
別表第1における基材の区分や構成物質を確認する必要があります。
代表的な樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、
ポリスチレン(PS)、ABS樹脂、AS樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、
ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、
ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)などが挙げられます。
このほか、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリアリレート(PAR)、
ポリエーテルイミド(PEI)、ポリシクロヘキシレンジメチレンテレフタレート(PCT)、
ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンサクシネート(PBS)なども、
ポジティブリストの基材体系に含まれます。
また、フッ素置換エチレン類を主なモノマーとする重合体、
ホルムアルデヒドを主なモノマーとする重合体、スルフィド結合を主とする重合体、
エポキシ化合物の架橋重合体なども別表第1の基材として規定されています。
重要なのは、「PE、PP、POM、PBTなどの樹脂名がリストにある」ということと、
「手元の具体的な材料が食品用途にそのまま使用できる」ということは同じではないという点です。
5、ポジティブリストに収載されている樹脂なら自由に使えるのか
結論として、ポジティブリストに関連する樹脂だからといって、
どのようなグレードでも無条件に食品用途へ使用できるわけではありません。
例えばPOMを使用する場合でも、POMという基材そのものだけでなく、
製品に使用されている安定剤、着色剤、その他の添加剤などについて確認する必要があります。
ポジティブリストの第2表では添加剤が規定されており、
物質によって使用量や特記事項などが定められています。
消費者庁によれば、第2表には2024年9月27日改正後で840件の添加剤が収載されています。
また、食品に接触する温度や食品の種類などによって確認すべき条件が異なる場合があります。
そのため、実務上は「POMだから大丈夫」「PPだから大丈夫」という材質名だけで判断せず、
メーカーの適合証明書や確認書などを利用して、実際に使用するグレードを確認することが重要です。
6、樹脂以外のゴムや金属は対象になるのか
ポジティブリスト制度について特に注意したいのが、
すべての食品接触材料がポジティブリストの対象になるわけではないという点です。
現在の制度で政令指定されている材質は「合成樹脂」です。
例えば、熱硬化性エラストマーである一般的なゴムは、
ポジティブリストの対象となる「合成樹脂」には含まれません。
一方、熱可塑性エラストマーは合成樹脂に含まれるため、対象となります。
厚生労働省のQ&Aでも、合成樹脂には熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性エラストマーが含まれ、
熱硬化性エラストマーであるゴムは含まれないと整理されています。
また、金属、ガラス、陶磁器なども、
合成樹脂を対象とするポジティブリスト制度とは扱いが異なります。
ただし、対象外だから食品衛生法上まったく確認不要という意味ではありません。
対象外の材料についても、食品衛生法に基づくその他の規格や安全性確保が必要となる場合があります。
7、食品に直接触れない部品はどう扱われるのか
食品機械などでは、樹脂部品が食品に直接触れるケースだけでなく、
食品から離れた場所に使用されるケースもあります。
ポジティブリスト制度では、食品に接触しない層について、
一定の条件を満たす場合には対象外となる考え方があります。
例えば多層構造の器具・容器包装では、食品に接触しない合成樹脂層について、
食品へ移行する量が「人の健康を損なうおそれのない量」を超えないよう加工されている場合、
ポジティブリストの対象外となる場合があります。
ただし、「食品に触れないから必ず対象外」と単純に判断するのは危険です。
部品の位置、構造、食品への移行可能性などを確認したうえで判断する必要があります。
8、ポジティブリスト適合を確認する際のポイント
実際に樹脂部品を購入する際には、まず「食品に接触する部品なのか」を確認します。
次に、具体的な樹脂材料のメーカー名、製品名、グレードを特定します。
例えば「POM」とだけ指定されている場合と、
「メーカー名・製品名・グレード」まで指定されている場合では、
確認の精度が大きく異なります。
さらに、添加剤や着色剤などについても確認します。
メーカーから食品衛生法適合証明書、ポジティブリスト適合確認書などが提供されている場合には、
それらを確認することで具体的な材料の適合状況を判断しやすくなります。
特に注意したいのが、「食品衛生法適合」という表現だけで判断しないことです。
使用温度、食品の種類、接触時間、使用方法などに条件が設定されている場合があるため、
実際の使用条件と証明書の内容が一致しているかを確認することが重要です。
9、2026年時点で確認しておきたい最新情報
2026年9月時点では、ポジティブリスト制度の経過措置はすでに終了しています。
現在確認すべき基本資料は、消費者庁公開の2025年6月1日以降のポジティブリストです。
現在の別表第1は、2023年11月30日に公布され、2024年9月27日に改正されたものです。
第1表が基材、第2表が添加剤を規定しています。
また、基材を構成するモノマー等についての通知は、2026年3月26日に最終改正されています。
さらに、ポジティブリスト制度に関するQ&Aについても、
2026年6月5日付で消費者庁から新しい事務連絡が公開されています。
したがって、古い資料だけを参照するのではなく、
2026年9月時点で消費者庁が公開している現行のポジティブリスト、
モノマー通知、Q&Aを確認することが重要です。
10、まとめ





