ゴムの引張強さとは?選定ポイントも詳しく解説
ゴム製品は、工業用途から日用品まで幅広く使用されており、
その性能を理解することは、適切な材質選定に直結します。
なかでも「引張強さ」は、ゴムの強度を評価するうえで非常に重要な指標です。
引張強さが不足していると、使用中に破断が発生し、
製品トラブルやライン停止といった大きな損失につながる可能性があります。
調達担当者・購買担当者にとって、使用環境や製品仕様に応じて適正なゴムを選定するためには、
引張強さを理解しておくことも重要と言えるでしょう。
本記事では、「引張強さとは何か」という基礎から、試験方法、ゴム材料ごとの一般的な傾向、
環境要因、設計・調達時の注意点までわかりやすく解説します。
「どの材料が自社用途に適しているのか」「なぜ引張強さが重要なのか」といった疑問解消に役立つ内容です。
目次
1、引張強さとは
引張強さとは、ゴムを引っ張って破断させる際の最大応力を指す物性値で、
一般的には「MPa(メガパスカル)」といった単位で表されます。
ゴムは伸びる特性を持つため、破断するまでの力を測ることで、
その材料がどれほどの外力に耐えられるかを数値化できます。
引張強さの評価では、伸び量だけを見るのでは不十分です。
引き伸ばした際に「どれほど強く耐えられるか」を示す引張強さは、
力学的信頼性を示す基本性能として、多くの規格評価に用いられています。
2、引張強さが重要視される理由
ゴム製品の破損原因の多くは「引張応力による破断」です。
例えば、パッキン・シール材・ベルト・防振ゴムなどは、使用中に繰り返し引張力が加わります。
引張強さが不足していると以下のような問題が起こり得ます。
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製品破断による機器停止
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シール不良による漏れトラブル
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寿命低下による交換頻度増大
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安全性の低下
引張強さは、耐久性を判断する基本指標として重要な役割を果たします。
3、引張強さの試験方法
一般的には、JISやASTMなどの試験規格に基づき測定されます。
試験片を一定速度で引き伸ばし、破断までの応力を測定します。
大まかな試験の流れは次のとおりです。
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規格形状の試験片を準備する
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引張試験機に装着する
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一定速度で引き伸ばす
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最大荷重を計測し、試験片断面積で割り算して算出する
引張強さは試験環境(温度・湿度)でも変動するため、規格条件に準じることが大切です。
4、引張強さに影響する要因
引張強さは材料固有の性質だけでなく、さまざまな要因に影響を受けます。
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ゴム材料の種類
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配合設計の違い(補強剤や加硫条件など)
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使用温度
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経年劣化(オゾン・紫外線など)
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湿度および周囲環境
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変形速度(荷重のかけ方)
同じ材料名称でも、メーカーやグレードにより大きく差が出る点に注意が必要です。
5、主なゴム材料の引張強さの特徴
■天然ゴム
柔軟性が高く、引張強さと伸びのバランスに優れた材料として広く使われます。
■クロロプレンゴム
耐候性と機械的強度のバランスがよく、工業用途に適しています。
■ニトリルゴム
耐油性に強く、油まわりで高い強度が求められる環境に使用されます。
■EPDM
耐候性や耐熱性が優れており、屋外用途でも信頼性を発揮します。
■シリコンゴム
耐熱性が極めて高い一方、一般には引張強さがそれほど高くない傾向があります。
■ウレタンゴム
引張強さと耐摩耗性に優れ、衝撃や摩耗を受ける用途で選ばれます。
■フッ素ゴム
耐薬品性や耐熱性に優れていますが、引張強さは配合により大きく変動します。
材料ごとの特性を理解し、使用環境に合わせた適切な選定が重要です。
6、温度・薬品・環境と引張強さの関係
ゴムの物性は温度によって大きく変わります。
低温では硬化し、伸びと引張強さが低下しやすく、高温では軟化して十分な力に耐えられないことがあります。
また、薬品・油・水分などとの接触も物性変化の原因となります。
吸収や化学反応によってゴムのネットワーク構造が変化し、引張強さの低下が起こります。
さらに、屋外環境では紫外線・オゾンによる劣化が進み、ひび割れや破断につながる可能性があります。
用途に応じた環境耐性の確認は欠かせません。
7、引張強さと硬度・伸び特性の関係
引張強さは、どれほど強い力に耐えて破れにくいかという指標です。
一方で、伸び特性は「どれだけ大きく伸びるか」を示します。
「よく伸びる=強い」というイメージを持たれがちですが、これは必ずしも正しくありません。
例えば、風船のゴムを想像してください。
非常によく伸びますが、少し傷がついているだけで簡単に破れてしまいます。
これは「伸びは大きいけれど、引張強さは高くない」ゴムの典型的な例です。
逆に、自転車タイヤのゴムのように硬くて強いものは、それほど大きく伸びなくても破れにくい特徴があります。
つまり、以下の点が重要です。
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伸びが大きくても、引張強さが低いゴムは、引っ張られると破れやすい
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硬くしすぎると伸びが不足して、折れたり割れたりする可能性がある
引張強さ・硬さ・伸びは互いに関連しており、
このバランスが製品用途に応じて最適化されているかが重要になります。
例えば、パッキンのように密着性が必要な場合は伸びや柔らかさが重要であり、
機械のベルトのように引張荷重が大きい用途では引張強さや耐久性が重視されます。
8、用途別に求められる引張強さの考え方
求められる強度レベルは用途ごとに異なります。
例えば、ゴムホース・ベルト類のように高い引張応力がかかる用途では高い引張強さが求められます。
逆に、シール用途などでは引張強さよりも柔軟性や気密性が優先される場合があります。
また、自動車部品やインフラ関連など安全性が重視される分野では、厳格な物性要求が設定されることもあります。
製品の破損モードを予測し、必要な物性性能を明確にすることが重要です。
9、調達・材質選定時のチェックポイント
ゴムの調達においては、単なる材料名称だけで選ぶと性能差によるトラブルにつながります。
次の観点を確認することが推奨されます。
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どの環境で使用されるのか(温度・薬品・湿度)
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応力がどの方向に、どの程度加わるか
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静的使用か動的使用か
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耐久性評価は実施されているか
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標準グレードか、補強設計が必要か
事前に要求仕様を整理し、信頼できる供給元に相談することも品質確保につながるポイントです。
10、まとめ
木成ゴム株式会社では、一般的な工業用ゴム製品の製造と材料選定に関するご提案を行っております。
使用環境や必要な特性を丁寧にヒアリングし、
引張強さだけでなく総合的な物性バランスを考慮した適切なゴム材をご提案いたします。
試作から量産まで柔軟に対応し、お客様の調達課題の解決に貢献いたします。
まずはお気軽にお問い合わせください。







