ゴムの耐摩耗性とは?選定ポイントも詳しく解説
ゴム製品は日常生活から産業用途まで幅広く活用され、その性能が製品寿命や安全性に大きく影響します。
その中でも特に重視される特性の一つが「耐摩耗性」です。
摩耗が起きると寸法変化や破損のリスクが高まり、
交換頻度増加によるコスト上昇や設備停止につながる場合もあります。
ゴムの耐摩耗性は材質の種類や配合、使用環境によって大きく変化するため、適切な選定が求められます。
本記事では、ゴムの耐摩耗性に焦点を当て、特徴、材質の違い、選定時の注意点などを解説します。
目次
1、耐摩耗性とは何か
耐摩耗性とは、繰り返しの擦れや接触によって材料が削れたり欠けたりする現象(摩耗)に対して、
どれだけ抵抗できるか、を示す特性です。
摩耗は外力や表面状態、摩擦係数、荷重、速度、温度など多くの要因によって左右されます。
ゴムの場合、柔軟性があるため衝撃吸収性が求められる用途が多い一方で、
連続的な摩擦が加わると表面が削れる可能性があり、耐摩耗性の高い配合や材質選定が重要です。
特に産業用途では摩耗によって寸法が変化し、本来の機能が失われることが大きな問題となります。
そのため、ゴム製品の寿命設計には耐摩耗性が欠かせません。
2、ゴムにおける摩耗が発生するメカニズム
ゴムは弾性体であるため、摩擦面との相互作用でエネルギーが吸収・散逸します。
このとき表面に繰り返しの圧縮、引張、せん断が加わり、以下のような損傷が起こります。
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表層が細かく削れる「アブレージョン摩耗」
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材料が引き裂かれる「切断・引裂き摩耗」
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高荷重下での大規模な損壊「疲労摩耗」
摩耗の進行速度は、使用環境や荷重条件によって大きく異なるため、
実際の使用条件を前提とした選定が求められます。
3、摩耗が問題になる代表的な用途
耐摩耗性が特に重視される用途には次のようなものがあります。
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ローラー、キャスター、搬送装置の接触部
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シール材、パッキン、ガスケットの摺動面
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シューズ底材、タイヤ、ベルトなどの高頻度摺動部品
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緩衝材として繰り返し荷重がかかる部品
使用条件が劣悪な場合や連続的な摩擦が発生する部位では、材質の選択が耐久性に直結します。
4、天然ゴム(NR)の耐摩耗性
天然ゴムは高い弾性と強度を持ち、一般的に耐摩耗性にも優れた材質です。
引裂き強度も強いため、急激な摩擦力にも耐えやすい特徴があります。
しかし、耐候性・耐油性が弱く、屋外や油環境では劣化が進行しやすい点に注意が必要です。
室内や乾燥環境下で大きな荷重がかかる用途では非常に有効です。
5、クロロプレンゴム(CR)の耐摩耗性
CRはバランスのとれた性質を持ち、耐摩耗性も安定していることが特徴です。
耐候性、耐オゾン性、難燃性なども総合的に良好なため、多様な用途に使用されています。
一方、極端に高荷重な環境では、より耐摩耗性に特化した材質(NRやウレタンゴム)と比較すると、
性能差が出ることがあります。
6、ニトリルゴム(NBR)の耐摩耗性
NBRは耐油性に優れ、油環境下の摩耗において有効です。
ゴム部品が油や潤滑剤にさらされる機器で多く採用されています。
ただし、耐候性は低めであり、屋外用途やオゾン環境では別材質を検討する必要があります。
環境条件の見極めが特に重要な材質といえます。
7、ウレタンゴム・シリコンゴムなど他材質の耐摩耗性
耐摩耗性に特化した材質として最も知られるのはウレタンゴムです。
高硬度にも対応可能で、ローラーやキャスターなど摩耗が大きい用途で高い評価を得ています。
衝撃負荷にも耐え、長寿命化につながることが多い材質です。
一方、シリコンゴムは耐熱性や耐候性に優れていますが、耐摩耗性は比較的低めです。
高温下での摺動が避けられない場合には検討されますが、摩耗を主とする用途では適材とはいえません。
フッ素ゴムは耐薬品性・耐熱性が非常に高いですが、耐摩耗性は用途により評価が分かれます。
環境耐性を重視したうえで摩耗を抑えたいケースで選定されることがあります。
8、耐摩耗性と硬度・弾性の関係
一般に、硬度が高いほど摩耗しにくい傾向がありますが、単純に硬度を上げると柔軟性が低下し、
他部材への衝撃伝達や騒音などの別問題が発生する可能性があります。
また、ゴムは粘弾性材料であり、摩擦エネルギーの吸収・散逸特性が摩耗量に影響します。
そのため、硬度だけでなく弾性回復力や引裂き強度など複合的な要素を考慮する必要があります。
適切なバランスを見極めることが、耐摩耗性と機能性の両立において重要です。
9、耐摩耗性評価の考え方
耐摩耗性評価方法は多数存在しますが、代表的なものとして以下のような観点があります。
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実際の使用環境に近い条件下で摩擦試験を行う
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摩耗量、摩擦係数などを複数指標で評価する
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切断・引裂きなど破壊メカニズムも併せて分析する
産業用途では摩耗だけでなく、温度、薬品、荷重速度なども総合的に評価し、最適な材質を選定します。
10、まとめ
木成ゴム株式会社では、用途や使用環境に合わせたゴム材質の選定・加工をしております。
耐摩耗性を含む一般的なゴム特性についてのご相談にも対応しており、
お客様の製品開発に最適なご提案が可能です。
搬送設備用ローラー、摺動部品、シール材など、摩耗が課題となる部位においても豊富な加工実績がございます。
ゴム製品の耐久性向上や材質検討でお困りごとがありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。








